プロローグ

青の絵の具に白の絵の具を少し足してたっぷりの水で溶かす…春の空はそんな水色をしている。浮かぶ雲はパレットの片隅に溶け残った白い絵の具のよう。柔らかい日差しは太陽の暖かさを地面まで運び、そよぐ風には新しい命を受けた草木がそっと薫っている。

麗らかな昼下がり、休日の校庭には二人の少女の姿があった。どちらも紺色のスカートに、紫色のスカーフを胸に結わえたセーラー服。プラタナスの木の下をクルクル周りながら、まるでラッパを手にした天使のように、底抜けに明るい笑い声を交し合っている。他には誰もいない世界。そこはいくつもの光に包まれていた。

やがて、少女の一人が悪戯っぽくポケットからカメラを取り出す。照れるもう一人の少女を木の前に立たせ、2メートルほど離れた場所からファインダーを覗いてあれこれポーズの指示を出す。
すると、木の前に立った少女が何かに気が付いたように指差す。カメラマンの少女がそちらを向くと、用務員のおじさんが歩いていた。彼女はすかさず駆け寄ると、頭を下げてカメラを手渡す。おじさんはニコニコしながらそれを受け取った。
カメラマンを交代した少女は急いでもう一人の少女の隣に並ぶ。目と目を合わせて微笑み合うと、二人はレンズの方を向いた。カメラを構えたおじさんの後ろには三年間通った中学校の校舎。いくつもの思い出たちが二人だけの記念撮影を見守ってくれている。
「じゃあ撮りますよ。お二人はお友達ですか?」
おじさんにそう言われ、少女たちはとびきりの笑顔で答える。
「はい」
「そうですか。ではよろしいですか?はい、チーズ」

…パシャ。