あとがき

シリーズ通しての語り手であり、カイカンの有難い部下でもあるムーン巡査。本作は彼女の内面を大きく掘り下げたエピソードとして、とても印象に残っています。特に中学生日記のパートは、自分でも懐かしい記憶や気持ちをたくさん思い出しながら、楽しく書くことができました。

物語の着想は数年前、実家へ帰省した際、妹家族と近所の公園に行った時です。昔、自分と妹が遊んでいたすべり台やブランコで、今は妹が幼い息子と娘を遊ばせている。その公園は春になると毎年桜が満開になることもあって、時の移ろいを題材にした物語を書いてみたいと思ったのです。
そこで登場させたアイテムがタイムカプセル。残念ながら僕は埋めた経験はないのですが、ドキュメンタリー番組などで楽しそうに発掘している人たちの映像を見ると、タイムカプセルは過去と未来を繋いでくれる、素敵な財産だなあと思いました。

いつもよりボリュームのある『刑事カイカン』でしたが、いかがだったでしょうか。読んでくださった方が、心の中のタイムカプセルに気付くきっかけになってくれたら嬉しいです。そしてこの春卒業する学生のみなさん、本当におめでとう!ぜひよい未来を!

令和2年2月14日  福場将太