プロローグ

また夏が来た。あれから三度目の夏だ。朝食までの時間、いつものように郵便受けから朝刊を取ってくると、リビングのソファでそれを広げる。そして今朝もそこにあの事件の記事がないことに俺は密かに安堵する。
もう三年…いや、まだ三年。死んだあいつには悪いが、できればこのまま波立つことなく日々が流れていってほしいと願う。そう、あの夏の出来事が全て夢だったと思えるくらいに。

新聞を置き、そして薄く目を閉じる。俺はその夢に心を傾けた。