プロローグ ~二十五年前の新聞記事~

 『湖に珍獣ハッシー現る!』

 東京と神奈川の境にある刃矢田町(はやたちょう)。都心から離れたこののどかな町が今、かつてない盛り上がりを見せているのをご存じだろうか。その立役者はハッシーと呼ばれる珍獣だ。町の北部の林の中にある湖に棲むとされ、その名からもおわかりのように1930年代にスコットランドのネス湖で目撃されたネッシーと同様、首長竜に酷似した姿をしているという。
 最初の目撃情報は五年前。散歩で湖を訪れた町の男性とその幼稚園児の孫の前に突然水しぶきを上げて姿を現した。それから徐々に噂が広まり、他にもハッシーを見たという町民が続出。今ではその姿を一目見ようと都内に限らず全国から多くの珍獣愛好家が湖のほとりへ駆けつけている。役場には専用窓口、駅には専用の案内所が設けられ、商店街では探索ガイドブックやオリジナルグッズも販売されるなど、今や町を上げての一大センセーションを巻き起こしている。

 はたして、古代生物の生き残りなのか、全く新たな生物なのか、それとも…?
 ぜひあなたもその目で珍獣ハッシーの正体を確かめに行かれてはいかがだろうか。

(取材協力:刃矢田町役場観光推進課)