あとがき

今年は無理をしてはいけない…わかってはいたのですが、どうしても書きたい衝動を抑え切れませんでした。というわけで、なんとか年内に間に合った刑事カイカンの新作です。

テーマは田園ミステリー。閉鎖的なコミュニティにはびこる因習や伝承、それに囚われてエスカレートしていく集団狂気、悪女、官能、滅びの美しさなどを盛り込んでみました。
正装した紳士淑女が洋館に集ってくり広げるきらびやかな西洋風ミステリーも大好きですが、やっぱり僕は日本人、金田一耕助シリーズに代表される土着信仰や村意識が巻き起こすドロドロとした和風ミステリーも大好きなのです。
同時進行で書いている『Medical Wars』がピュア過ぎる分、こちらは少々ダークになりましたね。やはり陰と陽、毒と薬はバランスが大切ということで。

実は今回の物語、どうしても結末を書きたい気持ちが強過ぎて、なんとエピローグから書いていくという初めての試みをしてみました。さらに解決編→捜査編→事件編と遡り、一番最後にプロローグを書いて完成したというわけです。音楽の曲作りに様々な手法があるように、執筆の世界もとても奥深い。まだまだ探求の旅は続きそうです。

そんな本作、少しでもお楽しみいただけたら幸甚です。
それでは皆様、大変な一年を本当にお疲れ様でした。くれぐれもご自愛くださいませ。

令和2年12月15日  福場将太