犯人と犯行を先に描いて探偵との対決を楽しむ、この形式のミステリを倒叙形式と呼びます。その金字塔が『刑事コロンボ』。中学・高校時代にその面白さに夢中になりました。『刑事カイカン』はそんなコロンボに憧れて、中学3年生の時にビデオカメラで仲間と作った映画に登場させたキャラクターです。それから大学時代も友人を犯人役にして『刑事カイカン』の小説を書いたりしていたのですが、社会人になってからはしばらく執筆から遠ざかっていました。
忙しさのせいもあったのですが、次第に視力の低下が起こりパソコン操作が難しくなったというのが大きな理由です。仕事の書類ならスタッフに手伝ってもらえますがさすがに趣味の活動はそうはいかない。半ばあきらめていた小説執筆でしたが、技術の進歩は有難く、音声読み上げソフトのおかげでまた自由に執筆ができるようになりました。
そんな音声読み上げソフトを使って、久しぶりに書いた刑事カイカンがこの『支持的受容的完全犯罪』です。作中でも触れていますが、『刑事コロンボ』の最初の犯人は精神科医。腹の探り合いをする倒叙ミステリの好敵手として、精神科医は最適です。
そんなわけでカイカンを精神科医と対決させてみた本作ですが、いかがだったでしょうか。少しでも何かを感じて頂けたら嬉しいです。ちなみに初稿はもう五年前で、今回若干の加筆訂正をしております。現在では製薬会社のボールペンに製品名は表示してはいけない時代になっておりますのであしからず。
ではではご拝読、心より感謝します。
平成30年9月1日 福場将太