あとがき

今回は航空ミステリー。古くはアガサ・クリスティの『雲をつかむ死』から、飛行中の機内というのは推理小説の舞台として魅力的な素材です。自分も一度は書いてみたいと思い、飛行機に乗る度に乗客や乗務員の動きを見ながらアイデアを考えていました。そんな本作は四年ほど前に書いていたものですが、この年末年始の帰省で久しぶりに飛行機に乗り、思い付いたアイデアを書き足してこの度完成としました。
いつも感じることですが、空港の係員さんも機内の乗務員さんも、視覚障害に対するサポートが本当に上手であたたかい。安心して空の旅ができるのも、そんなスタッフのみなさんの優しさのおかげです。本当に感謝しております。

ところで当サイトの図書室に本作の掲載をずっと見合わせていたのは、この続きに当たるエピソードがあり、それとセットでと考えていたからです。それは本作のラストで初登場したあの人をメインに据えたエピソードなのですが、ようやくそれが仕上がりそうな目途が立ちましたので、本作のお蔵出しとなった次第です。

久しぶりのフーダニット、楽しんでいただけたら幸甚です。
ちなみに作中で触れた沼は北海道に実在しています。僕も一度だけ見に行きましたが、あの圧巻の光景は今も網膜に焼き付いています。世の中の情勢が落ち着いたら、みなさんぜひこの北の大地へ遊びに来てください。

令和4年1月9日  福場将太