あとがき

今回は初心に立ち戻っての倒叙ミステリー、犯人と犯行を最初に描き、どこからそれを切り崩すかという形式で書いてみました。倒叙ミステリーの金字塔『刑事コロンボ』然り、日本が生んだ倒叙ミステリーの傑作『古畑任三郎』然り、この形式の物語では犯人が何らかの専門職に就いている場合が多く、視聴者は謎解きだけでなく、普段自分の知らない業界を覗けるというのが大きな楽しみだったりします。

そんなわけで今回はネイリストを犯人にしてみました。ムーンさんがネイルアートを受ける場面が書いていて一番楽しかったです。ただしこれはあくまで架空のネイルサロン、実際の業界とは大きく異なるであろうことはご容赦ください。
じゃあどうしてこの設定を選んだのかというと、どうしても『ネイルに死す』というタイトルを使いたかったからなのです。もちろんこれはアガサ・クリスティの『ナイルに死す』のパロディ。あの世界的名作と張り合えるわけもございませんので、あたたかい目でお楽しみいただけたら幸甚です。

コロナの世の中になって、オシャレなデザインのマスクも登場したと聞きます。悲しみの中でも彩りを添えようとする、それは人間の持っている素敵な力だと思います。

令和3年11月5日  福場将太