今回は追跡ミステリー。なかなか新作の執筆に手がついていない今年度、ふと思い出したのが十年ほど前に書いたこの物語でした。いつも従順なムーンさんをカイカンと衝突させてみたいというのが着想の原点だったと記憶しています。この度、多少の修正を加えての掲載としましたが、何かを感じていただけたら嬉しいです。
本作のヒロインに起こった「ラジオでたまたま耳にした曲名も歌手名もわからない曲がずっと忘れられない」という体験は僕自身のもの。音楽というのは本当に不思議で、その時の自分の精神状態に共振する曲に出会った時、たったワンフレーズだったとしても、それは鮮烈なインパクトとなって永遠の記憶になります。またいつかその曲とめぐり会える偶然を心待ちにして生きてみるのも、人生の楽しみですね。
ちなみに作中に登場するベイシティボーイズは架空のグループですが、モデルになったバンドがデビューしたのはちょうど四十年前の11月。武道館まで上り詰めた後、惜しまれつつも解散しましたが、ボーカルのお二人は今でも音楽活動を続けておられます。これからも応援していきますぜ。
ではでは皆様、寒さも増してくる季節、命も心もご自愛くださいませ。
令和7年11月21日 福場将太