あとがき

 今回は濡れ衣ミステリー。名探偵の身近な人間に容疑がかかるという設定は、物語がエモーショナルになるためか、ミステリー漫画やミステリードラマでよく見かけます。
 この度、容疑をかけられる人物として再登場してもらったのが彼女。既出のキャラクターを再び動かすというのは楽しいもので、実は彼女が初登場した頃から少しずつ構想を練っていました。無事に形になってほっとしています。

 また今回の謎解きは、昨年春にNHK北海道からテレビ取材を受けた時のことがきっかけになっています。僕が食事の仕度をする場面を撮影していて、レトルトカレーを用意してごはんが炊けるのを待っていたのにいつまでも炊き上がらない。どうしていつもより余計に時間がかかったのかは、本作を読んでくださった方ならおわかりでしょう。ただこの失敗からアイデアが生まれたことを思うと、本当に無駄な経験などない、人生は味わいに満ちていますね。

 ちょっと欲を出して人間ドラマにもテーマ性を含ませた本作、何かを感じていただけたのなら嬉しいです。ではでは、皆様の心にも穏やかな春風がそっと吹くことを願って。

令和7年5月7日  福場将太