北海道視覚障害教育研究大会 見えない世界を見る心の力

 2025年11月14日(金)、北海道視覚障害教育研究会の旭川大会で講演を行なった。会場は先月訪問して生徒さんたちと交流した旭川盲学校。そこで教育に当たっておられる教職員の方、保護者の方、そして道内の他の盲学校の先生方も集まっておられた。大会は前日から開催されており、そこに参加できたのは誠に光栄である。

■演題

視覚障害との二人三脚 見えない世界を見る心の力

■セットリスト

第1章 視覚障害との歩み
第2章 視覚障害からの3つの回復
第3章 回復のための心得
第4章 みんなが暮らしやすい社会とは
第5章 まとめ

1.未来の視点

 案内されて講堂に入る。先月ギターを弾いて子供たちと歌ったのと同じ場所なのだが、当然ながら今回はとてもおごそかな雰囲気。講演の順番が来ると、誘導してもらって壇上へ登った。小さく深呼吸して講演開始。

 実は今回用いたスライドは先月広島県眼科医会主催の講演会で使った物とほとんど同じ、話したネタもほとんど同じであったが、自分にとっては随分違う講演をしたように感じている。というのも、話す際の視点が大きく異なったからだ。
 広島の講演会は視覚障害当事者とその家族・支援者に向けたものであったのに対し、今回は盲学校の生徒の家族・教育者に向けたもの。「今」よりも「未来」を意識してのメッセージが多かった。

 子供たちはこれから社会へ飛び込んでいく。かつては視覚に障害を持つ者の選べる進路は少なかった。医療の業界においても、目の見えない者は医師や看護師の免許を取得すること自体が厚い法律の壁に阻まれていた。
 2001年にそれが一部緩和され、2003年には全盲で医師国家試験に合格した第1号の医師が誕生。それでも視覚障害を持つ医療従事者の多くは専門の学校への進学後、あるいは免許取得後に障害を負ったケースが大多数であったが、2024年に教育現場での合理的配慮の義務が広く示されたことにより、これからは医学部や看護学部に入学する時点で視覚障害を有する学生も存在し得ることとなった。
 僕が所属している『視覚障害をもつ医療従事者の会 ゆいまーる』の発足は2008年。当初は十名に満たない会員数だったのが、日本全国から仲間が加わり今や百名を超え、医療の道を目指す若者たちからの相談も寄せられてきている。

2.苦労の評価

 とはいえ盲学校にいる子供たちに「将来医療の仕事も選べるよ」と安易に伝えることには葛藤がある。確かに法律的には可能となったがまだまだ現場は追いついておらず、狭き門・険しき道であるのは間違いない。その苦労を考えれば、軽はずみに促すのは無責任かもしれない。
 ただし苦労は客観的な評価だけで決まるものではない。やりたい仕事がやれる、かつては許可されなかった挑戦ができるというのは、障害当事者にとって喜びであり、狭き門・険しき道を進むことも、本人は楽しいかもしれないのだ。周りからは苦労の多い生き方に見えても、本人がそれを苦労と感じているとは限らないということである。

 今回は子供たちが聴く講演ではなかったので、目の不自由な医療従事者も存在するという話にとどめたが、もしいつか目の不自由な生徒に「将来お医者さんになれますか?」と尋ねられたら、僕はどんな言葉を返すだろう。どんな力加減で応援したり、思い止まらせたりするのだろう。自分の中でしっかり答えを見つけておきたい。

3.無限の世界

 今回も最後に「視覚障害者は視覚想像者」という話しをした。目が不自由な子供にもちゃんと地球があって、大地があって、海があって、空を見上げれば綺麗な虹だって架かっている。視覚障害者は視覚のない真っ暗な世界を生きているわけではなく、自ら想像・創造したカラフルな世界を生きているのだと。
 講演の後、校長先生はそれに対して「視覚は有限、想像は無限」というお言葉を寄せてくださった。まさに子供たちの可能性を磨く、教育というお仕事をされている方ならではの見解だと思った。教育と医療、それぞれの役割を共に頑張りましょう!

 壇上から降りて会場を去る。行きも帰りも盲学校の先生がJR旭川駅まで送ってくださった。しかも改札口から電車まで誘導してくださった駅員さんは、今年2月にRDDの講演で旭川へ来た際にも誘導してくださった方と同一人物。もしかしたらと思っていたら、向こうからそうおっしゃってくださった。こんな小さなつながりも本当に嬉しい。
 座席に座ると、せっかくなのでお土産にいただいたお弁当を食べることにした。電車で食事を摂るなんて何十年ぶりだろう。なんだか一気に混み合ってきたので慌てて口に運んだが、梅干しのタネを家に着くまでずっと舐めながら帰ることになったのもまた素敵な思い出である。

4.研究結果

 教育は未来を作る仕事。医療は未来を守る仕事。
 医療者として、当事者として、視覚障害教育の世界に携わらせていただけて幸せです。

*今回も旭川盲学校の校長先生が記事を書いてくださいました。
https://www.kyokumo.hokkaido-c.ed.jp/bbses/bbs_articles/view/42/8050465cfa7039c15308df22490f77ff?frame_id=63 

令和7年11月17日  福場将太