子供たちへの講演(前編) RDDスタディツアー

 今夏は偶然にも子供たちへの講演をする機会が重なった。ここにその記録を残しておきたい。まずは2025年8月7日(木)に行なわれたRDDスタディツアーから。

■演題

 心に優しい想像力を

■時間割

 1時間目 当事者として、難病との関係の変化
 2時間目 支援者として、3つの回復
 3時間目 人間として、優しい想像力
 4時間目 まとめ&対話

1.学びの旅

 RDDとはレア・ディジーズ・デイ、『世界希少・難知性疾患の日』のことであり、今年は日本でRDDの活動が始まって15周年、難病法が施行されて10周年の節目ということもあり、各地で難病について知ろうというイベントが盛んに企画されている。
 僕が最初にRDDに関わったのは今年の2月、北海道の旭川で行なわれたイベントで講演をした時だった。

 数ヶ月後、その講演を聴いてくださった一人の方から連絡が入った。その方がおられるNPO法人アスリッドではRDDを多面的に知ってもらうべく、毎年中高生を連れて難病の当事者を実際に訪ねる『スタディツアー』を開催しているとのこと。今年は北海道に来て様々な当事者や関連施設を回るそうで、その一環で僕の所へも寄りたいとのことだった。

2.学びの視点

 そして当日。診療を終えた夕刻の病院に、アスリッドのスタッフに引率されながら高校生を中心としたメンバーはやって来た。聞けば全員が同じ学校というわけではなく、それぞれ日本各地からの参加だという。
 会議室で机を囲んでまずはお互い自己紹介。その後に三十分ほどのミニ講演、内容は網膜色素変性症にまつわる当事者としての体験と、回復にまつわる支援者としての教示、そして優しい想像力という人間として大切にしている心得。詰まる所、僕がよく話していることのダイジェストだ。その後は、みなさんから感想や質問を自由に出してもらって対話を行なった。

 思えばこんなふうに若者と語らえる機会は貴重。質問に答えたり、こちらが尋ねたりしているうちに、人にはそれぞれの視点があることを改めて感じた。その人だから見える物がある。注目する点がある。難病についても、年齢や世代によって、あるいはどういう立場で関わるかによって、見解や見識は様々。
 でもそれでいい。大切な夏休みにはるばる北海道まで出向いて難病のことを知りたいと思った理由は子供たち一人ひとり違うのだろう。それぞれの視点で、それぞれの学びを深めてくれたらいい。

3.学びの記憶

 僕がこの季節に思い出すのは、毎年8月に小学校に集まって開催されていた広島での平和教育。実際に原子爆弾を体験された様々な立場の当事者の方々から話しを聞いた。その一言一句を記憶しているわけではないが、壇上に並んで座っておられた姿は今も忘れていない。

 教科書で学ぶのも大切なことだが、直接会って得られる学びの効果は計り知れない。今回のスタディツアーに参加してくれた子供たちにとって、僕という人間と会ったことが、交わした言葉が、いつかどこかで何かのヒントになってくれたら嬉しい。

4.研究結果

 自分が高校生の頃、病気や障害についてどれだけのことを考えていただろうか。
 会いに来てくれてありがとう。せっかくの夏休み、しっかり遊んでください!

令和7年8月10日  福場将太