江別市手話通訳・要約筆記登録者研修会 支援者が支配者になってはいけない

 2025年7月11日(金)、江別市健康福祉部障がい福祉課主催の研修会
が開催された。会場は江別市総合社会福祉センター、対象者は手話通訳・要約筆記登録者、すなわち耳の不自由な方の支援をしているみなさんだ。

■演題

 支援者が支配者になってはいけない そのための心得

■セットリスト

 第一章 障害とは何か
 第二章 障害からの3つの回復
 第三章 支援者の心得
 第四章 みんなが暮らしやすい世界
 第五章 まとめ

1.通ずるもの

 精神障害については支援者として、視覚障害については当事者として、多少の知識と経験がある自分だが、聴覚障害についてはそうではない。なので講演のご依頼をいただいた際は躊躇もしたのだが、支援者としての基本的な心得を話してほしいということだったのでお受けすることにした。
 以前に新宿区視覚・聴覚障害者交流コーナーの講演で当事者の心得を話した際も、視覚障害・聴覚障害いずれの当事者にも通ずることは多かった。今回はそれの支援者バージョン、共通する心得はきっとある。そう考え準備を進めた。

2.あの島のように

 当日まずお話したのは障害とは何か、障害者とは何をもって障害者なのかということ。
 アメリカのビンヤード島ではかつて聾者が多くいたため、島の住人は耳の聴こえる・聴こえないに関係なくみんな手話が使えた、すると聴覚障害が社会生活上の支障にならなかったという有名な話がある。聴覚障害があってもその人はその島において障害者ではなかったということだ。
 このように、障害とは社会生活上の支障である、という考え方に立つならば、それを克服するための方法は大きく二つ。一つは、その人が努力や訓練で社会に合わせられるようになること。もう一つは、社会がその人を受け入れられるように柔軟になること。双方からの歩み寄りがなければ障害の克服はうまくいかない。そして、支援者には双方に対する働きかけが求められているのだ。

 …なんて書くと難しい話に思えてくるが、そういえば今年5月に講演でお邪魔した室蘭言泉学園では多くのスタッフが会話の中で自然に手話を添えていた。利用者の中にもスタッフの中にも聴覚障害の当事者が複数おられるとのことだったので、環境を柔軟にしている例と言えるだろう。素敵なのはごく自然にそれが実現していること。もしかしたらビンヤード島もあんな雰囲気だったのかもしれない。

3.支える者の幸福

 講演の後半では支援者の心得について触れた。いずれも当たり前で基本的なこと、でも日々の仕事に追われているとつい忘れてしまうことでもある。自分自身、人様に指導できるほど実践できてもいないが、それでもちゃんと心に留めておきたいと思う。

 講演後の質疑応答ではみなさんからたくさんの言葉をいただいた。相手にしている障害の種類や自身の立場には違いがあっても、誰かの回復をサポートするために支援者はそこにいる。みなさんの熱意からたくさんのエネルギーをチャージさせてもらった。

4.研究結果

 目が見えないせいであまりスライドを使わない僕の講演。それを耳が不自由な人にもお伝えできるのは、手話通訳と要約筆記をしてくれるみなさんがいるおかげ。
 いつも本当にありがとうございます!

令和7年7月11日  福場将太