ありがとう、ドラえもんわくわくスカイパーク

 仕事や私用で北海道を離れる時に利用するのが新千歳空港。友人に空港まで送迎してもらった際、一緒に立ち寄ってもらうことにしていたのがその建物内にある『ドラえもんわくわくスカイパーク』だ。この度、十四年の歴史に幕を下ろすことになったそうで、ここに思い出を残しておきたい。

1.パークの歴史

 ちょいと調べてみると、この世界初の空港併設型ドラえもん施設がオープンしたのは2011年7月15日のこと。ドラえもんのテレビアニメがリニューアルして7年目、映画ではリメイク版の『新・のび太と鉄人兵団』が人気を博した年だ。一方、時勢としては東日本大震災が3月11日に発生した年でもあり、まだ日本全体に緊張が強かった頃だろう。

 僕個人としては失明を翌年に控えた時期。2010年までは大学時代の音楽部のOBライブ出演のために毎年上京していたのだが、視力の低下で独力でJRや空港を利用することに限界を感じ、なるべく遠出しないようにしていた頃だ。そのため、新千歳空港にこの施設がオープンしたことも知らずにいた。
 それから『視覚障害をもつ医療従事者の会 ゆいまーる』と出会い、『公益社団法人 NEXT VISION』に参加し、そのイベントのために少しずつまた東京や神戸へ出掛けるようになった。新千歳空港のドラえもん施設を知ったのは、目が見えない状態での空港利用のコツを掴んできた2019年頃のこと。その後のコロナ到来でしばし動きは封じられたものの、2023年以降は積極的に北海道以外での講演のお仕事も受けるようになり、搭乗口へ行く前にドラえもんに会いに行くのが旅の恒例となっていった。

2.パークの内容

 この施設は大きく三つに分かれており、ひみつ道具やドラえもんとふれあえるアトラクションゾーン、ドラえもんグッズの専用ショップ、そしてドラ焼きやドリンクを楽しめるカフェだ。
 僕が利用していたのは主にショップ。店頭には実物のドラえもんよりもおそらく大きい巨大なドラえもんのぬいぐるみがある。広島へ帰省する際には、キタキツネの格好をしたドラえもんのキーホルダーなど、限定販売のお土産を甥っ子や姪っ子に買っていったものだ。もちろん自分用もちゃっかり購入。

 また、とあるドラえもん好きの相手と一度カフェにも入ったことがある。メニューはもちろん、インテリアの至る所に小さなドラえもんやひみつ道具のマスコットが散りばめられていて、テーブルから離れてついつい店内を散策してしまったものだ。まさにわくわく、子供の頃からの気持ちが大人になっても働いてくれるのは嬉しい。

3.パークの終焉

 そんな施設が2025年7月14日をもって閉館。ちょうど7月12日に空港を利用する用事があったのでこれが最後と友人に頼んで立ち寄ってもらった。
 するとアトラクションゾーンは子供たちで溢れ、記念撮影にも長蛇の列。カフェも満席。お目当てのショップも商品棚はほとんどすっからかん。長年のご愛顧というか、有終の美というか、そもそも半世紀以上も世代を越えて愛され続けているドラえもんがすご過ぎるのだが、改めてそれを思い知ることとなった。
 そんなわけでショップのお土産はもはやないかに思われたが、ぽつんと残された九谷焼のドラえもん茶碗を発見。店員さんによればこれも最後の一点という。かくして僕は、このショップでの最後にして最高額の買い物をしたのであった。

4.研究結果

 ありがとう、ドラえもんわくわくスカイパーク。
 目が不自由になった時は苦痛でしかなかった空港利用が待ち遠しい楽しみに変わったのも、この施設があってくれたおかげ。どこでもドアが発明されるまで、これからも空の旅を楽しみたいと思います。

令和7年7月14日  福場将太