札幌市視覚障害者福祉協会主催 視覚障害者情報交換交流会

 2025年2月23日(日)、札幌市視覚障害者福祉協会主催の視覚障害者情報交換交流会にお招きいただき講演を行なった。会場は札幌市身体障害者福祉センターということで、今回も駅員さんに誘導してもらいつつJRで札幌へ出向いた。

演題

 支援者が支配者になってはいけない

セットリスト

 第一章 精神科医療の歴史から見る支援と支配
 第二章 視覚障害からの3つの回復
 第三章 生活の回復のためにできること
 第四章 気持ちの回復のためにできること
 第五章 まとめ

1.講演本編

 今回の演題は、札幌市視覚障害者福祉協会の会長さんからのリクエスト。最初にそれを伺った時は、『支配』というワードはいささかきついのではないかと不安だったが、蓋を開けてみると例年より多くの参加申し込みがあったとのことで、みなさんの興味の高さに驚いた。
 相手の回復を応援する『支援』と、相手を命令に従わせる『支配』。一見全く違うことのようだが、実は紙一重。支援者の悪意や強欲によってそうなるのは論外だが、一生懸命に回復を応援していたはずの支援者が、気付かぬうちに回復を妨害する支配者になってしまうことはけっして少なくないのだ。特に僕が専門としている精神科医療においては、そのリスクが大きい。

 講演の前半では、精神科医療の歴史から支援が支配に暴走した例を紹介し、後半では支援の目標である回復の意味とその方法についてお伝えした。会場からは時にあたたかく、時に真剣な反応があり、適度なリラックスと緊張の中で講演を終えることができた。
 ちなみに僕が所属している『公益社団法人 NEXT VISION』やその活動拠点の神戸アイセンターについての話題も少し出したところ、この北海道の地でも知ってくれている方、実際に問い合わせた経験があるという方がおられた。また閉会後に挨拶してもらってわかったのだが、所属している『視覚障害をもつ医療従事者の会 ゆいまーる』の仲間も会場におられた。つながりとは本当に有難いものである。

2.質疑応答

 演題に加え今回もう一つ不安だったのは、2時間のイベントのうち、1時間が質疑応答に当てられていたことだ。そんなに質問が出るだろうかと案じていたが、予想を上回る幅広い質問をいただき、1時間はあっという間に過ぎた。
 おおよそ半分が当事者のみなさんからの質問、もう半分は支援者のみなさんからの質問で、当事者も支援者も眼科領域の方もいれば、精神科領域の方、両方に関わっておられる方もいて、なんだか不思議な感じがした。でもこれはむしろ望むところ。つい人は自分の障害ばかりに気持ちが行ってしまいがちだが、自分とは異なる障害について知ることで、お互いの苦労や共通の苦労を学び合うことができる。

 僕も質問にお答えしながら、改めて自分の視覚障害が精神科医としての支援に役立っていることを感じた。支援を受ける側の気持ちを経験できることはもちろん、助けてもらわないと働けないからこそ、スタッフとのコミュニケイションが自然に生まれる。それが医師のワンマン化を予防し、支援が支配にならない力加減をチームで考えるきっかけになっているのだ。
 もちろん現実は甘くない。自分が支配的な医療をしてしまっているなと反省する場面も多々ある。ただ当事者としての苦労だけでなく、そんな支援者としての葛藤も会場のみなさんと共有できたのは本当に励みになった。
 せっかくの質問にもっとちゃんと答えられるように、次回までにしっかり勉強致します。

3.研究結果

 支援者と当事者の視点を持ち、眼科と精神科の話が入りまじる。
 これが僕の目指したい、自分ならではの講演会のスタイルかもしれない。
 来場者のみなさん、スタッフのみなさん、数々の気付きをありがとうございました。令和6年度の講演ツアーはこれにておしまい!

令和7年2月23日  福場将太