今年もとても長かった。自分の人生において初めてのことをたくさん経験できたからだ。
また同時に、せつなさをいくつも感じた一年でもあった。元旦の北陸震災に始まり、自分にとって大好きな作品を作ってくださった方々がたくさん旅立たれた。人生を歩めるというのは有難いことでもあり、寂しいことでもあり。そんな2024年を研究しよう。
1.今年のコンセプト
掲げていたのは『自由であれ』。正直今の今まで忘れていたが、確かに今年は無自覚ながら自由に動けていた気がする。とはいえ全てを好き放題にしたということではない。仕事をしたり団体に属したりしている以上、縛られていることは色々ある。それでも自由を感じられたということは、自分の素直な気持ちを大切にできたということなのだろう。
2.メリット
今年は世間でも働き方改革、時間的拘束を緩めようと叫ばれた年でもあったが、一番大切なのは心理的拘束を緩めること。仕事である以上、やらなくてはいけないことがあるのは当然。その中でも自分の素直な気持ちを守れる働き方をする。難しいことではあるが、その手法が少しだけわかったような気がする。
思えば学生時代もそうではなかったか。本分である勉学をしつつ、部活も友情も恋愛もバイトだってこなす医学生たち。どんなに忙しくても楽しいと思えたのは、素直な気持ちを大切にできていたからだ。
3.デメリット
それはモラトリアムの時代だからできることだ、という反論もあるだろう。組織の中で自分の気持ちを働き方に反映させたり、仕事よりも友情や恋愛、夢を優先させたりするのは大人げない、プロではないという批判もあるだろう。職務に忠実なことを美とする考え方もけっして間違ってはいない。
ただ忠実と誠実は異なるのではないか。自分の心を押し殺して自らの役割に殉じるのは、忠実だが誠実ではない。求められることにも応えつつ、自分の素直な気持ちも生かす…そんなアウフヘーベンこそが、真の働き方改革なのかもしれない。
自ら仕事に励んでこその勤労。いくら過労を予防しても、勤労でなくなってしまっては意味がないのである。
4.活動報告
ではそんな2024年の活動を振り返ってみよう。
●公益社団法人 NEXT VISION
3月に東京で行なわれた『I See! Working Awards 2024』の授賞式に審査員として参加。暗闇の中での開催という新たな試みで、とても興味深かった。
●視覚障害をもつ医療従事者の会 ゆいまーる
今年の総会は5月に東京で開催。現地参加するのは久しぶりで、しかも前夜の懇親会には初参加。日本中の仲間たちとグラスを交わして語らえたのは本当に楽しかった。
また二年に一度の機関誌についても、昨年担当を引き継いで初めての編集作業となったが、みなさんの協力のおかげで無事に第8号を発刊することができた。点字毎日に連載中の『ゆいまーるのこころだより』についても、肩の力を抜いて楽しく原稿を書けたように思う。
●音楽関連
今年も新たに製作したのは3曲。3月に出演したNHKの番組『北海道道』の中でも使用してもらった『エネルギーチャージ』、バリアフリーラブソングと銘打った『I like your voice』はいずれもお気に入りのナンバーだ。また昨年登壇した公開講座『前例を超える前例を創る』に着想した『君も僕も ~前例を超える前例を創れ!~』は、久しぶりのアップテンポナンバーで、今後も元気をくれそうである。
さらに今年は6月に大学卒業以来で音楽部の侵入生歓迎会に参加し、学生時代の代表曲『Medical Wars』をみんなの前で弾き語り。注がれる懐かしい蔑みの視線がたまらなかった。
●執筆関連
今年はなんといってもこれが大きい。まずは医学教育という学会誌に『インクルーシブ教育と医学部シンドローム』という論文を寄稿。自分は学者ではないので普段学術論文の類は全く書かないのだが、今回は自らの経験からの考えでよいとのことで、学生時代からずっと気になっていた医学部シンドロームという難病について、自分なりの診断と治療の指針をまとめてみた。また小説としては、昨年の京都旅行を題材に書いた『刑事カイカン 緋色の上洛』を当サイトの図書室にアップした。
これらだけでもかなり満足だったのだが、さらにそこに舞い込んだのが書籍発刊の話。詳細は専用コーナーに書いたので省くが、何はともあれ初の著書『目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと』を上梓できたのは今年最大の喜びであろう。
●その他
ありのまま自立大賞という伝統ある賞をいただいたり、著書発刊に伴って新聞や雑誌、ラジオで取り上げていただいたり、たくさん有難い機会に恵まれた。また東京で開催された視覚リハ大会で発表をしたことに加え、現在暮らしている北海道内で講演の依頼を複数いただけたのも嬉しく、現地でたくさんの方々と触れ合った。この北の大地に来て18年、ようやく少しは貢献できたのかなと思えた。
そして、著書発刊がきっかけで学生時代の懐かしい仲間たちとも久しぶりに連絡を取り合うこともできた。家族や職場はもちろん、視覚を失ったからこそ知り合えた人たちも含め、自分は本当に出会いに恵まれていると再認識した。
5.来年のコンセプト
2019年が『ためらうな』、2020年が『優しくなれ』、2021年が『スキルアップ』、2022年が『新たなる挑戦』、2023年が『自分に厳しく』、2024年が『自由であれ』ときて、2025年をどうするか。それはもう『調子に乗るな』一択であろう。
6.研究結果
念願は人格を決定す、継続は力なり。出会えたみんなに心からの感謝。
2024年の自己採点: 81.1点
令和5年12月23日 福場将太