京視協主催講演会@京都ライトハウス

 2023年11月4日(土)、京視協こと京都府視覚障害者協会からのご依頼を受けて講演を行なった。今回はリアル開催、しかも会場は伝統ある京都ライトハウスの研修室。明治維新で政治の中心は京都から東京へ移っても、視覚障害支援は京都が中心…そう感じずにはいられないほどエネルギーに溢れていたその講演会の記録をここに残しておきたい。

■演題

 望む回復のために当事者自身ができること

■セットリスト

 第一章 自己紹介
 第二章 3つの回復
 第三章 まとめ

1.ややこしや

 失礼ながら、実際に赴くまで京視協と京都ライトハウスは同じ物だと僕は思っていた。
 京視協は京都府にある視覚障害当事者の包括的な団体で公益社団法人。例えば僕が愛読している『メルマガ色鉛筆』は視覚障害当事者がライターとなって想いを綴ったメールマガジンだが、これを発行しているのは京視協である。
 一方、京都ライトハウスは視覚障害者支援の様々な事業を展開している総合施設で社会福祉法人。例えば視覚障害当事者が実際にそこで生活して訓練を行なうことで有名な『鳥居寮』は京都ライトハウスの事業の一つである。また京都ライトハウスは4階建ての立派なビルでもあるため、建物の通称やバス停の名称にもなっている。

 これで京視協と京都ライトハウスが違う物であることがわかった。ただ京都ライトハウスの設立には京視協が大きく関わっていたり、京視協の事務所は京都ライトハウスの建物の中にあったりする。当然両方に携わっている方もたくさんおられるわけで、例えば勤務時間中は京都ライトハウスの職員として働き、休み時間は京視協の事務所でメルマガ色鉛筆の打ち合わせをするなんてこともあるそうだ。
 それを教えてくれた人は「ややこしいですよね」と笑っていたが、僕としてはこのようにいくつかの世界が混ざり合っている場所は大好きである。一人の人間が時には当事者、時には支援者と変身し、一つの肩書きに限定されないのもとても良いことだと思っている。
 そんなわけで今回の講演会は主催は京視協、会場は京都ライトハウスということで僕はようやく理解したのであった。

2.ありがたや

 講演会の講師は三人、一人三十分ずつで僕は二番目の登壇であった。短い時間だったこともあり今回はいつもの『3つの回復』の話だけをさせていただいた。そこで驚いたのは会場のみなさんのあたたかい反応だ。
 例えばカミングアウトの難しさの話で、目が見えないと自己紹介したはずの相手から後日「どんな車に乗ってるの?」と訊かれたという体験談。例えばバリアバリューの話で、職場が停電した時に同僚は慌てていたけど自分はいつもどおり働けたという体験談。それらに対して会場から「あるある!」「そうそう!」と笑いや拍手が起ったのだ。

 もちろん笑ってもらった方が有り難いのだが、障害の話は一歩間違えれば悲しい響きにもなるのでなかなか笑いにしにくい面がある。にも拘わらず当事者やそのご家族が大半の会場で笑いや合いの手のリアクションが起りやすい雰囲気というのはすごいことだ。オンラインとは違い、会場まで足を運んでくださっている時点で、ある程度障害を受け入れて意識も高いみなさんというのもあっただろうが、3つの回復の中で一番大切な『心理的回復』の地盤が、すでに京都の地にはあるのかもしれないと思った。

3.はずかしや

 僕の本業は精神障害当事者の支援だ。だから普段から視覚障害当事者の支援に関わっているわけではなく、時々相談を受けたり、こうやって講演やイベントに参加させてもらったりするくらいの活動しかしていない。それに比べ、今回登壇された僕以外のお二人の講師の先生方は視覚障害当事者の支援について豊富な知識とご経験を持っておられた。お話を拝聴して学ぶことが本当に多かった。
 中でも会場からいくつもの疑問や不安が投げかけられたのが、高齢の視覚障害者を支援する制度についてのこと。普段僕は認知症の診断で高齢者支援に携わることが多いが、認知機能だけでなく視力だって加齢に伴い低下する人間の能力、視覚障害の苦労は高齢になればなるほど増加すると言ってよい。そして身体障害者手帳を持って視覚障害に対する自立支援給付を受けていた人が65歳になって介護保険制度に切り替える際に生じる不具合・不利益、俗に『65歳問題』と呼ばれるこのテーマについて、恥ずかしながら僕はほとんど知識がなかった。なので会場のみなさんからの生の声とそれに対する二人の講師の先生方のご説明を聞いて、この問題の切実さと重要さを思い知った。人間は誰でも老いる、高齢者が直面する問題は誰にとっても他人事ではないのだ。

 本当に良い刺激になった講演会だった。音楽活動において、一つのバンドが自分たちだけでライブハウスを貸し切るのが難しい場合、複数のバンドが集まって合同でライブを開催する。これを俗に『対バン』と呼ぶが、こうすることによってたくさんのお客さんを集められることに加え、必要経費を折半できるというメリットがあるわけだが、実はもう一つ、他のバンドの生のパフォーマンスを見て刺激を受けられるという旨味も大きい。僕も学生時代の音楽部や、大学卒業後の放浪時代に参加した音楽イベントにおいて、自分以外の出演者のステージからいくつもの刺激を受け、学びを得た。
 今回の講演会は三人の講師がテーマもキャラクターも三種三洋でまさに対バン、お互いの情熱が相乗効果をもたらしたイベントになったと思う。

4.研究結果

 たくさんの学びをくださったお二人の先生方、あたたかく盛り上げてくださった会場のみなさん方、そして今回の講演会を企画・運営してくださった京視協企画部の方々、本当にありがとうございました。
 全国に視覚障害の当事者団体は数多くありますが、京視協のように一つの県丸ごとを網羅しておられるのは稀有です。まさに京都「府」視覚障害者協会! 益々のご発展をお祈りすると共に、またのご縁を心より楽しみにしております。

令和5年11月10日  福場将太