心の名作#20 INDIANA JONES インディ・ジョーンズ

 テーマ曲と共に全身に勇気が湧きあがる、そんな心の名作を研究するシリーズの20回目です。今回から3回連続で、僕ガ憧れてやまない永遠の3大ヒーローを紹介していきます。

研究作品

 まず最初のヒーローはいよいよ来月映画最新作が公開される大人気シリーズの主人公、考古学者にして無類の冒険家、インディことインディアナ・ジョーンズです。この研究は博物館に収めるべきものだ!

ストーリー

 時は1930年代、考古学者のインディアナ・ジョーンズは大学で教鞭を執る傍ら、実際に世界を巡って古代の秘宝や異物を探す冒険家でもあった。今日もまたスリルとロマンに満ちたアドベンチャーが彼を待っている!

福場的研究

1.キャラクターとテーマ曲

 普段はスーツにメガネで学術書を手に授業をする知的な先生、でも実はカウボーイハットに革ジャンで銃と鞭を手に魔境を駆け巡る冒険野郎という設定がとにかく素敵です。全く別の姿のようでありながら考古学というキーワードでつながっているのも面白く、しかも何ヶ国語も話せて歴史や伝承にも詳しい博識だったり、筋肉ムキムキのハンサムで女性にモテモテだったりと一見完璧超人のようでありながら、蛇が大の苦手で子供みたいに怖がったり、恋愛では妙に意地っ張りだったりもする。このとってもかっこよくてちょっぴりお茶目なキャラクターの魅力は、ハリソン・フォードさんの演技だからこそ生み出せたのは間違いありません。まさしく奇跡の当たり役です。

 そしてインディの冒険を大いに盛り上げてくれる要素はもう一つ、そう、きっと誰もが一度は耳にしたことのある偉大なテーマ曲『レイダース・マーチ』です。作中でインディの活躍と共にこの痛快で壮大な曲が流れるとまさに血沸き肉踊る、視聴者はとんでもない高揚感に包まれるのです。
 劇場の大スクリーンに映し出される砂埃の中を馬で駆けるインディ、大音量で流れるレイダース・マーチ、もうそれだけでドキドキとワクワクが止まらない。ここまでキャラクターとテーマ曲の魅力が圧倒的な映画はそうはありません。

2.形式美の魅力

 映画シリーズの各作品はそれぞれのカラーがありつつも、形式美が保たれているのも僕好みです。例えば、冒頭は映画会社のロゴと風景がシンクロして始まり、メインの大冒険とは異なる秘宝をめぐる小冒険が導入として描かれる、インディは誰かからの依頼がきっかけでメインの大冒険に乗り出す、冒険にはヒロインと相棒と敵組織がいる、インディの顔がアップになって戸惑いの表情をする場面がある、小動物の大群の恐怖の場面がある、長距離移動する際は地図が表示されて赤マーカーで航跡が描かれる、クライマックスで秘宝の超常的な力が少しだけ発動する…などなど、シリーズで一貫されています。

 『BACK TO THE FUTURE』や『STAR WARS 旧シリーズ』は映画史に残る3部作ですが、インディ・ジョーンズも肩を並べる完成度。やはりある程度の形式美を保ちつつ、第1作で世界観を作り、第2作で少し変化球、第3作で第1作の雰囲気に返り咲いて完結する、というのが3部作の王道として美しいと思います。

3.映画シリーズの冒険

●レイダース 失われたアーク

 冒頭の小冒険はジャングル奥地の神殿に眠る黄金像、この時点でインディのかっこよさとお茶目さ、ハットと銃と鞭という装備、冒険家というキャラクターが視聴者にしっかり印象付けられます。メインの大冒険の秘宝はモーゼの十戒石板を納めた聖櫃、依頼者は陸軍情報部、相棒かつヒロインは恩師の娘でかつての恋人マリオン、マリオン不在時はエジプトの発掘王で盟友のサラが相棒、敵組織はナチスドイツという設定です。
 本作はとにかく銃に鞭に乗馬にプロペラ機に潜水艦にとインディの冒険のかっこよさが全編を通してこれでもかと描かれています。アクション・謎解き・ロマンスが緩急のリズムを作ってほっとしたらまたピンチ、と全く飽きさせない展開。爆走するトラックの車体の下をくぐり抜ける場面に度肝を抜かれた人も多いでしょう。

 一番好きなのは、囚われたマリオンを助けるために敵の目を盗んでナチスの潜水艦までインディが泳いで渡っていた場面。あのテーマ曲が盛大に鳴り響き、味方の船からの声援の中、若干ヘロヘロになりながらも勇ましく潜水艦の上を走るインディの姿は本当に本当に滅茶苦茶かっこいい! これを見た瞬間にインディ・ジョーンズは永遠のヒーローとして僕の心に刻まれました。
 ちなみに恩師のレイブンウッド教授がインディを評した言葉は「才能に溢れた放浪者」、まさに!

●インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説

 冒頭の小冒険はヌルハチの遺骨をめぐる上海マフィアとの争奪戦、メインの大冒険の秘宝は伝説の石・サンカラストーン、依頼者は不時着したインドの村の長老、ヒロインはなりゆきで同行した人気歌手のウィリー、相棒は頼りになる少年ショーティ、敵組織は邪教集団という設定です。
 本作はとにかく最初から最後までアクションの連続、トロッコに乗って駆け抜ける場面のスリルはまるで本当にジェットコースターに乗っているようです。そして冒頭で拳銃を紛失したインディがクライマックスで手にする武器は大きな刃渡りの剣。ハットに剣というビジュアルがとにかくかっこいいですね。

 今でこそシリーズの異色作としてアクセントを与えている本作ですが、映画公開当時の反響はどうだったのでしょう。確かにインディが登場してあのテーマ曲も流れるんだけど、前作とあまりにも雰囲気が違う。闇の宮殿で剣を手に魔術使いと戦って囚われた子供たちを助け出すなんて…幻想的な音楽も相まって、まるでアラビアンナイトのシンドバッドの冒険みたい。また恐怖の描写が多い分、コミカルな演出も増やされていて、インディのお茶目な顔芸をたくさん楽しめるのも本作の魅力です。
 ちなみに今年のアカデミー賞でショーティ役のキー・ホイクアンさんが受賞、プレゼンター役で登場したハリソン・フォードさんと熱い抱擁を交わしたのはインディファンにはたまらないものがありました。またショーティが登場する冒険も見てみたい!

●インディ・ジョーンズ 最後の聖戦

 冒頭の小冒険はコロナドの十字架をめぐる盗掘団との争奪戦、なんと少年時代のインディが描かれ、ハットと鞭と蛇嫌いのルーツが明かされます。メインの大冒険の秘宝はキリストの血を受けたとされる聖杯、依頼者は探索隊を指揮する富豪、ヒロインと序盤の相棒は女性学者のエルザ、敵組織は再びナチスドイツ、そして中盤以降の相棒は…本作に最大の魅力を与えている存在・インディの父親ヘンリーという設定です。
 本作には第1作への回帰が多く見られ、インディが授業をする場面、キャラクターの再登場、敵組織も同じ、さらにインディが少しだけレイダースの冒険に触れるセリフまであります。そしてアドベンチャーの舞台は世界規模に広がり、アクションも謎解きもパワーアップ、特にインディが挑戦する三つの試練の謎解きにはしびれました。そしてロマンスは控え目になった分、ジョーンズ親子の交流に重きが置かれていて、命の危険の真っ最中で喧嘩したり咬み合わなかったりするやりとりが本当に微笑ましい。激戦中の戦車の上でヘンリーがのん気にインディに言う「これでも考古学かね?」というセリフは最高ですね。

 第1作のストイックさと第2作のコミカルさがほどよく融合したような演出で、シリーズで最もヒューマンドラマのテイストが強い作品だと思います。インディアナの名に隠された真実も明かされ、男四人が馬で夕焼けの荒野を駆けて行く後ろ姿のラストシーンは感無量、もちろんここで鳴り響いているのはあのテーマ曲。
 第1作へのオマージュ、懐かしいキャラクターの再登場、主人公のルーツと内面の掘り下げ、そして最高のラストシーン…まさに3部作の完結編はこうあるべきという大満足の内容ですね。
 ちなみに本作の邦題『最後の聖戦』も素晴らしく、聖杯を巡る人類最後の戦いであると同時にインディにとって最後の冒険であることを見事に表していて、映画史に残る名タイトルだと思っております。

4.映画以外の冒険

●ヤング・インディ・ジョーンズ

 ジュブナイル小説として小学校の図書館にありました。イラストも多めで読みやすく、描かれるのはインディの少年時代の冒険、特に盟友サラとの初対面の場面を憶えています。

●インディ・ジョーンズ 若き日の大冒険

 テレビで放映されていたシリーズ。10代から20代前半までのインディの冒険が描かれていて、必ずしも秘宝をめぐる話ではなく、インディがハリウッドで活躍する話など映画とは違う世界観が楽しめました。
 最終回だったか、現代ですっかりおじいさんになったインディが登場、昔を懐かしんで図書館の階段の手すりを滑り降りてみるシーンが印象的でした。

●小説版 インディ・ジョーンズ

 文庫本で発刊されたシリーズで、インディの20代半ば~30代前半の冒険が描かれています。少年時代にサーカスのライオン使いの鞭を見て練習を始めたとか、大学時代に時計台に死体の人形をぶら下げたとか、インディの生活史も掘り下げられていました。
 嬉しかったのは毎回表紙の絵がハリソン・フォードさんのインディだったこと。タイトルも『神々の陰謀』『魔空の覇者』などセンスがよく、ノアの方舟やユニコーンなど映画シリーズでは触れられなかった題材が扱われていましたね。中学・高校時代は推理小説以外にインディの小説も通学電車のお供でした。

 それにしても、こうやって並べてみるとインディは少年時代から毎年ずっと冒険ばかり。こんな人生、命がいくつあっても足りませんって!

5.映画シリーズの続編

 19年の時をおいて2008年に公開されたのがインディの壮年時代の活躍を描いた映画第4作『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国』です。そしてコロナ禍を越えていよいよ2023年6月に公開になるのが老年のインディが登場する第5作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』。
 本来はこれらも観賞して研究コラムにしたいところですが、やっぱりアクション映画は画面が見えないと魅力も半減、そのため今回はちゃんと自分の目で見ることができた3部作までの研究としておきます。いずれ視力が戻ったら5部作として再研究がしたいです。

 ところで今年の最新作だけ『インディ・ジョーンズ』の表記とサブタイトルの間に「と」の文字が入っているのですが、シリーズの形式美としては「と」の文字をはずして『インディ・ジョーンズ 運命のダイヤル』でよいと思うのですがこれはどうして? ハリー・ポッターシリーズの真似?

福場への影響

 小学生の時、初めて家のビデオで父親に『レイダース』を見せてもらってから、しばらくは高揚感が薄れず、日常で何かある度にテーマ曲を口ずさんでいました。そして母親にせがんで近くのスーパーでツバの大きなハットを買ってもらいました。かぶって帰ったら父親からは「インディだね」とすぐに見抜かれましたが。

 まあ今から思えば全然カウボーイハットではなく、おじさんが釣りに行く時にかぶってそうな代物だったのですが、このハットは大学卒業までずっと愛用していました。すっかり僕の頭にはまってしまってちょっとやそっとじゃはずれない状態、インディもあのアクションの中でハットが飛んでいかないのはこういうことだったのかもしれませんね。
 どこへ行くにもかぶっていたハット、今や表面の布も破れてボロボロ、インディどころかスナフキンみたいになってますが、宝物としてずっと大切にとってあります。

好きなセリフ

 「見損なわないでもらいたい」
 インディアナ・ジョーンズ

令和5年5月14日  福場将太