美食の研究レシピ1 日清焼きそばと水の量

 あなたには大好きな食べ物があるだろうか。思い出が蘇ったり、元気が湧いて来たりする、魔法の料理があるだろうか。幸福な食事は心も人生も豊かにしてくれる。このシリーズでは愛してやまない料理たちについて研究しよう。
 今回はインスタント焼きそばの決定版『日清焼きそば』をいただきます!

1.お品書き

 インスタントの焼きそばといえば、『ペヤング』、『一平ちゃん』、北海道では『焼きそば弁当』など色々あるが、それらはカップにお湯を注いで乾麺をほぐし、湯切りをしたものに液体ソースを絡めて出来上がりとなる。日清焼きそばでも『日清焼きそばUFO』はこのカップタイプだ。
 でも僕が愛するのは袋タイプの日清焼きそば。形状としては『チャルメラ』や『出前一丁』と同じ。だからあくまで家庭の鍋で作り、麺に絡めるのも液体ではなく粉末のソース。

 その魅力はなんといってもスパイシーなソースで、おたふくソースとも通常の焼きそばソースとも異なるその絶妙な味は他に類を見ない。さらに鍋で作るため、インスタントながら鉄板で作る焼きそばに食感が近いのも魅力。
 このお値段でこのおいしさ、みなさんもこのご馳走をぜひ召し上がれ!

2.レシピ

 調理法は極めてシンプル。小鍋に水を注いで乾麺を投入、沸騰させながら麺をほぐし、ほどよいタイミングで粉末ソースを絡めて、最後に付属の青のりをふりかけて完成となる。
 ただシンプルとはいえ誰でもおいしく作れるというわけではない。むしろシェフの腕次第で滅茶苦茶おいしくもなるし、滅茶苦茶まずくもなる。これは大袈裟ではなく、カップタイプのインスタント焼きそばよりも出来上がりの味の差が大きいのだ。

 おいしく作る最大のポイントは最初に小鍋に注ぐ水の量。これが多過ぎると麺がほぐれた後でも水が残ってしまい、水気の多い焼きそばになってしまう。逆に水が足りないと麺のほぐれが不十分になってパサパサ、いずれの場合もせっかくの弾力が失われてしまう。つまり麺がほどよくほぐれた時点でちょうどお湯が蒸発してなくなっているのがベスト、そうなるような水の量を最初に注がなくてはならない。
 目安としては気持ち少なめな量にすること。カップ焼きそばのように乾麺が水没する量では明らかに多過ぎる。その半分以下の量くらいでよい。そんなに少なくて乾麺がほぐれるのかと思われるかもしれないが、そこは適度に箸でほぐしながら火にかけるのがテクニック。少量の水でもうまく麺を動かしたり引っくり返したりすることで、蒸気の力も借りながら麺はちゃんとほぐれるのである。ただやっぱり水の量が少な過ぎてはうまくいかない。おそらく50ml以内の誤差で適量の水を注がなければ理想の完成には至らないのである。

 え? 計量カップを使えって? それでは面白くないでしょう。それに鍋の大きさや火の強さによっても水の適量は変わる。やっぱり目分量、僕のように目が不自由な人は心分量で作るのが醍醐味なのである。

3.思い出

 広島で暮らしていた幼少期、日清焼きそばはしょっちゅう我が家の食卓に登場していた。平日の朝食や日曜日の昼食、小腹が空いた時の夜食など、週に一回は母親が作ってくれていた。もちろん目分量で水を注いで最高の出来上がりだった。テレビでも頻繁に日清焼きそばのコマーシャルが流れていたし、小学校でベルマークを集める時は日清焼きそばのパッケージから切り取って持っていったものだ。それくらい生活の中に定着しており、社会科見学で行くまで、僕は『日清製鋼』の工場を見てここであの焼きそばを作っているんだなとずっと思っていた。

 ただ高校を卒業して上京すると、カップの『日清焼きそばUFO』はあるのだが僕が求める袋タイプを見かけない。だから時々実家から送ってもらっていた。北海道に来た今もなかなか店になく、セブンイレブンに唯一袋タイプの大盛りが売っているのみ。もちろんこの大盛りを常用しているのだが、勘違いかもしれないが通常サイズの方が味が濃厚な気がしている。
 それがなんと先日近所のスーパーで関西フェアをやっていて、そこに通常サイズの袋タイプが山積みになっているのを発見。しかも5袋で1パックというまさに幼少時に我が家が買っていた物。やっぱりこの商品は関西限定なのだろうか。うれしくて思わず3パック買ってしまった次第である。そして久しぶりに食べた味は…やっぱりこのスパイシーソースがたまらない!

 そんなこんなで大好きな日清焼きそば、これからも一生かけて最高の水の量を研究し続けよう。

令和4年10月5日  福場将太