網膜色素変性症フォーラム

2022年4月30日(土)、オンラインで開催された『網膜色素変性症フォーラム』というイベントに出演させていただきました。心の医療者としても、視覚障害の当事者としても、大変有意義でしたのでここに感想を残しておきたいと思います。そしてこんな素敵なイベントに出演の機会をいただけたのも、『公益社団法人 NEXT VISION』や『視覚障害をもつ医療従事者の会 ゆいまーる』との出会いがあったからこそです。みなさん、いつも本当にありがとうございます。

1.はい、どこでもドア!

フォーラムは午前中から開催されていたのですが、仕事の都合で午後からの参加となりました。それでも北海道からワンタッチで飛び入りできるのですからやはりオンラインという技術はすごいと改めて感じました。まるでどこでもドア、これがリアル開催だったら仕事を休んで前夜から移動しなくてはいけないところでした。

昼食を摂ってパソコンの前に座り、自分の出番が来るまで午後の部を拝聴していましたが、色々な立場の方が色々な角度から視覚障害についての見解、就労の可能性、心と体の癒しの技法などを語っておられて、いずれもとても興味深かったです。そして改めて同じ苦労や葛藤を持つ仲間が日本中にたくさんいるんだなあと感じることもできました。

ただちょっと不安だったのが自分の出番が来た時にちゃんと音声がつながるかということ。実はこれまでに経験したオンラインイベントでも、音声ミュートが解除できなくてコメントを求められても声を届けられなかった苦い経験が何度かあります。特に気を付けておかなければならないのはそのイベントが録画されている場合で、録画を了解するボタンを押さないといくらミュート解除の操作をしても無効なのでした。昨年末のNEXT VISIONの大感謝祭でそれを経験してから、今回はそのポカはやるまいと『了解する』のボタンを音声ソフトで必死に探しました。あとはパソコンやネット回線に不具合が起こらないことを願うばかり。一応予備のパソコンも用意はしていたものの、できれば機材トラブルはないに越したことはありません。

なんだか学生時代の音楽部のライブの時の感覚と少し似ています。失敗をくり返してだんだん対応が上手になったり、トラブルに備えて予防策を講じたり。今回は途中参加で事前のリハーサルもできなかったので余計に緊張しました。オンラインは便利だけどトラブルに弱い。ドラえもんのどこでもドアも、急に使えなくなって大ピンチというシーンが映画に何度もありましたもんね。

2.視覚障害と心の健康

そしていよいよ自分の出番。音声ミュートを解除してまずは医療者としての講演に登壇。演題はシンプルに『視覚障害と心の健康』としました。自分が視覚障害をオープンにして今のような活動をするきっかけになった2018年の講演会のことを少しお話して、その後は「どうして目が悪くなると気持ちが落ち込みやすくなるのか、どうすればそれを予防できるのか」ということについて、精神医学も引用しながらお話させていただきました。

今回キーワードにしたのが『お荷物感』で、障害を抱えると多くの人が「自分は何もできない役立たず、迷惑ばかりかける厄介者」と自分をお荷物だと感じてしまう。そして職場でも家庭でも「自分が身を引いた方が全て丸くおさまるんじゃないか」とつい思ってしまいがち。僕自身もゆいまーると出会ってなかったらずっとそう考えていたと思います。そんなお荷物感に対して医療者として見つけた一つの答えを伝えさせていただきました。

それにしてもオンライン講演は話している間、聴いている人たちのリアクションが全くわからないので正直どれくらい伝わっているのか不安でした。実は音声が途切れてほとんど聴こえていないんじゃないかなんて悪い想像も膨らみました。でもフォーラム終了後に電話やメールで感想をいただいて、ひとまず声はお耳に届いていたことに安心。どれだけの人の心に届いたのかはわかりません。共感される方もいれば反感を憶える方もおられる内容だったかと思いますが、どんな気持ちでも何かを感じていただけたのならメッセージの送り手としてはとても嬉しいです。

3.恋心とカミングアウト

続いては当事者としての登壇。カミングアウトをテーマに四人でトークセッションを行ないました。特にシナリオなどはなかったのでどんな流れになるのか楽しみにしていましたが、僕以外は全員女性だったということもあってか恋愛の話題がメインに。目が悪くなるとどうしても恋に臆病になってしまう、好きな人に障害を打ち明けられるか、どんなデートができるか、結婚となるとさらに相手のご家族にどう思われるだろうか、などなど、具体的で実用的なお話をすることができました。やっぱり語らいはいいですね。一人では思い付かなかった発想や着眼点がたくさんありました。

途中なんだかみんなで僕を励ましてくれているような雰囲気になっていましたが、僕がそんなに恋に飢えているように感じられたのでしょうか。当たらずとも遠からず? 女性には敵いませんね。このトークセッションで少しでも当事者のみなさんが「恋をしたい!」「好きな人と一緒に歩きたい!」と思ってくれたなら嬉しいです。無理はせず、大切な人に大切なことをカミングアウトできるように、一緒に成長していきましょう!

4.研究結果

そんなわけでとっても心がポカポカしたフォーラムでした。企画・運営されたスタッフのみなさん、本当にお疲れ様でした。たくさんの感謝が生まれた素敵な一日をありがとうございました。今日の気持ちを忘れないために、ぜひカミングアウトをテーマにしたラブソングを作りたいと思います。

令和4年5月1日 福場将太