総括 2020年

世界史に残る一念となった2020年がもうすぐ終わる。一年前の2019年を振り返るコラムでは「個人としては近年で一番充実感を覚える年となった」なんて書いていたが、正直今年は個人の充実がどうのと言っている場合ではなかった。それはもう聞くのも言うのもうんざりしているが、向き合わないわけにはいかない新型コロナウイルスの問題。今年最後はそんな2020年を研究しよう。

1.今年のコンセプト

それは『優しくなれ』。昨年がとても忙しく自分としては頑張った一年だった分、人への配慮に欠けていたと感じたから決めたコンセプトだった。だが正直ちゃんと意識していたかと問われれば自信がない。実際に人と向き合っている時には忘れていて、やりとりが終わってから、そうだ優しくなるんだったと悔やむことが多かった。
ただコロナによって情勢が大きく変わったことにより、新たなコンセプトが生まれた。それは『無理するな』。コロナから身を守るには、外出を控えて接触頻度を下げ、疲労を減らして免疫力を高めるしかない。特に今年の後半戦はこのコンセプトをずっと意識していた。それは自分に優しくなるということであり、そうなると自然に人にも優しくなるわけで、『無理するな』のコンセプトが追加されたおかげで、結果的に『優しくなれ』も無意識ながら達成されていったように思う。

2.メリット

『無理するな』のメリットは、何といっても自分の精神的・身体的負担を減らせるということ。仕事でもそれ以外でも、もっとやりたいと意気込んだり、やらねばならないと追い込んだりしがちな性分なので、今年は無理をしないと思うことで、ちゃんとやめたり断わったりすることができた。頑張れば結果が出せたんじゃないかとか、断わった相手を傷付けたんじゃないかとか、そんな自己嫌悪も、今年は無理をしないのが最優先と言い聞かせることで自分を許すことができた。
それにより、前述したように人にも優しくなれた。今はみんな余裕がない、みんな大変なんだと思うことで、人に対してイライラしたり、厳しい対応をすることは昨年より少なかったと思う。

3.デメリット

それはやはり、充実感や達成感の喪失。努力や挑戦を控えた分、成長や躍進を感じることは少なかった。自分がどんどんパワーダウンしている気がして、昨年ならやっていたことを今年はやらなかった時、そこには必ず無念があった。そして仕事上でも、一度縮小してしまったものを、はたしてまた拡大できるのかという不安は常にあった。

4.活動報告

まあそんな2020年、どんな活動ができたかを振り返ってみよう。

●公益社団法人 NEXT VISION

今年はどんどん神戸アイセンターへ行こうと目論んでいたが、2月の『I see! Working Awards 2020』が結局最初で最後の神戸行きとなった。あとは先月の大感謝祭のオンライン参加。はたして僕が三宅くんの力になれる日はいつのことやら。

●視覚障害をもつ医療従事者の会 ゆいまーる

今年は定期総会や勉強会が中止。直接会うことは一度もなかったが、その分メーリングリストやオンラインでの情報交換が活発に行なわれた。また二年に一度の機関誌も過去最大のボリュームで刊行。そして点字毎日に連載中の『ゆいまーるのこころだより』が二年目に突入した。今年の『ゆいまーる』は、底力を見せてむしろ元気だったような気がする。
僕はのほほんと所属しているだけで何もしていないが、守田代表、そして会員のみなさん、本当にお疲れ様でした。

●取材関連

3月に医療ジャーナリストの塚崎朝子さんの著書『患者になった名医たちの選択』が刊行。名医という呼称は重過ぎるが、このような本に取り上げていただけたのは嬉しかった。ただ刊行の頃はちょうどコロナ第一波のど真ん中で、塚崎さんもメールで「世界が変わってしまった」とおっしゃっていた。新たな医療情勢の中で、また勇気を与えるメッセージを発信していってほしい。
他には視覚障害に関する情報を発信しておられる『ミルクフ』というサイトからの取材をお受けした。興味深い記事が多いので、今でも時々覗かせていただいている。
また医師の就職・転職をコンサルティングしておられるM3の取材もお受けした。自分自身もコンサルティング会社のおかげで今の職場に巡り会えたので恩返しの意味もあった。ぜひ、病気や障害を持った医療従事者の就労にも道を拓いていただきたい。

●音楽関連

今年はほとんどできていないというのが正直なところ。まず週一回必ずやっていた、好きなだけギターを弾いて好きなだけ歌うという至福の時間を中止。腕や喉がなまっている気がしてとても不安だ。新曲の録音も少ししかできなかったが、先月音楽室に更新した『天地創造できない僕らは』は、その中でも一番思い入れが強い曲となった。

●執筆関連

音楽ができなかった分、今年はとにかく文章を書く楽しみに浸っていた。『ゆいまーるのこころだより』を三回担当させてもらい、また鉄道身障者福祉協会発行の雑誌『リハビリテーション』に寄稿した。あととあるメールマガジンからも依頼をいただいて、匿名ではあるが時々書かせてもらっている。誠に有難いことだ。
ただ自分としては、やはり図書室に連載中の『Medical Wars』が今年一番の執筆活動。書きながら医学生時代の気持ちを色々思い出して、コロナに立ち向かうパワーが湧いてきた。物語も佳境なので、来春の完結まで無事書き上げたいと思っている。

5.来年のコンセプト

2019年が『ためらうな』、2020年が『優しくなれ』に『無理するな』ときて、はたして2021年をどうするか。どんな情勢になっているのかわからないのでコンセプトを決めにくいが、やはりこうやって振り返ってみると、来年は『スキルアップ』ではないかと思う。
今年は心にも体にも負担をかけなかったが、その分あまり成長ができなかった。自分がなまっていくのも不安だった。だから、来年はちょっと勉強・練習の比重を増やしてみたい。 想いっきり働けない分、医療の勉強。思いっきり歌えない分、リズム感や楽器の練習。そして文章力も高めていきたい。それこそ学生時代のように、勉強もしながら好きなことの修行も頑張ってみよう。そしていつの日か思いっきり動ける情勢になったら、その成果を存分に発揮すればよいのだ。

6.研究結果

とにもかくにも、お疲れ様でした。疲れないようにするのに疲れた一年でした。

2020年の自己採点: 56.7点

令和2年12月18日  福場将太