ふと未来を見失った時、そっと寄り添って元気を呼び起こしてくれる、そんな心の名作を研究するシリーズの八回目です。
研究作品
今年めでたく40周年を迎える映画ドラえもん。今回研究するのは、アルバム『DORA THE BEST』。その名のとおりドラえもんにまつわる楽曲を収録したCDです。ドラえもん関連のCDは他にもたくさんありますが、僕の知る限り映画主題歌を全曲収録した初めての作品ではないでしょうか。
もう何百回聴いたかわからない、人生の愛聴盤。ああ僕はどうして大人になるんだろう?
福場的研究
1.タイアップ曲ではなく主題歌
ドラえもん映画といえば1980年に第1作が公開され、以後毎年春の恒例として製作が続けられている国民的人気シリーズ。ちなみに僕が生まれたのも1980年。まさに人生をドラえもん映画と共に歩んできたといっても過言ではありません。
その魅力は、巧みなストーリー、印象的なキャラクター、そして奥深い世界観とたくさんありますが、忘れてはならないのが音楽。ドラえもん映画を盛り上げ心に残るものにしてくれている一つの要因は、主題歌の魅力です。特に原作者の藤子・F・不二夫先生がご存命だった第17作までは、毎回武田鉄矢氏作詞のもと独自の主題歌が製作されていました。
「独自の」とは、いわゆるヒットチャートに参戦するタイアップ曲ではなく、その映画を彩るためだけに作られた曲という意味です。ドラえもん映画主題歌たちはまさにテーマソングの名に相応しく、一作一作のテーマに見事にシンクロしているのが素晴らしい。作品と主題歌、お互いがお互いを深め合い引き立てあっています。
歌手の顔や名前を思い浮かべる必要もなく、映画の中でしか聴けない名曲たち。みなさんも幼い頃ドラえもん映画を観て、子供心にいい曲だなあと感じた主題歌がきっとあったはず。映画ではフルコーラス流れないため、全部聴きたいと僕は幼少時から願い続けていました。そしてついに発売された『DORA THE BEST』を店で見つけた時は、膝が震えました。迷わず購入し、家のラジカセにセットしてスイッチを押した瞬間…あの曲もこの曲も、ずっと好きだった主題歌たちが惜しげもなくフルコーラスで次々に流れる…あの感動と興奮は今も忘れられません。
2.歴代主題歌
●ポケットの中に
第1作『のび太の恐竜』より。恐竜の時代に遊びに行き帰れなくなったのび太たちの冒険物語。初めての映画ということで、脚本・演出・作画など全ての力加減が手探りで、定型にはまらない新鮮さと荒削りな勢いを放っている作品です。
主題歌は特に本作に言及した内容ではありませんが、ドラえもんと一緒に不思議な世界へ冒険に出かけるという映画シリーズ全ての共通イメージが描かれています。「僕はここにいる、君のポケットに」と歌うドラえもんの声。子供たちにとって、ドラえもんとはどこにいてどんな存在なのかを感じさせてくれる一曲です。
●心をゆらして
第2作『のび太の宇宙開拓史』より。前作はもともと短編として発表されていた物語に映画用の加筆を施して作られましたが、本作は最初から映画のために作られた物語。部屋の畳が宇宙船の扉に繋がってしまうという発想、宇宙での闘いに西部劇のイメージを持ちこむセンスなど、藤子F先生の才能がいくつも光っています。
主題歌はまるで人間を見守る神様のような俯瞰の視点で歌われているのが印象的で、「やっと気付いてくれたのですか」という優しい歌い出しに引き込まれてそっと包まれる、そんな揺りかごのような一曲です。
作中では最後の別れの場面で使用。特にのび太に教わったあやとりをやって見せる異星の少女と、そこにそっと拍手を贈るのび太の姿が大好きです。もう二度と会えなくても、習ったあやとりが一緒に過ごした証明なんて素敵ですよね。
●だからみんなで
第3作『のび太の大魔境』より。前の二作はドラえもんとのび太がメインの物語でしたが、今回からついにお馴染みの五人全員が主役となり、特に本作はジャイアンにスポットが当たっています。野良犬との出会いがアフリカ奥地にある人類と違う進化を遂げた犬の王国へと繋がり、その動乱に巻き込まれるうちに最後は王国の伝説の謎が解明されていく…というストーリー展開がお見事。藤子F先生のSFは、いつも身近な所に不思議世界への入り口があるのがよいですよね。
主題歌はテーマとのシンクロが強い一曲。火の海に包まれもう逃げるしかない状況の中、みんなを冒険に巻き込んだ負い目と責任をずっと感じていたジャイアンは、ある行動をとります。そこで流れるのがこの主題歌。「きっとみんなが心を合せたらきっと僕は弱虫じゃないよ」、音声がカットされ歌と爆音だけが流れる演出も相まって、ドラえもん映画が本当の意味で映画になり、そして主題歌も本当の意味で主題歌になった名場面です。
この曲は何回聴いても涙が出る、何度も勇気をもらった福場のフェイバリットです。
●海はぼくらと
第4作『のび太の海底鬼岩城』より。本作をドラえもん映画の最高傑作に挙げる人も多いですが、それくらい脚本・演出のクオリティが高い。ムー大陸・海底都市アトランティス・バミューダトライアングルなど海の神秘を盛り込んだ設定、前半の夢のような世界から後半の恐怖の闇へと流れていくストーリー、人間とメカの関係や核問題をさり気なく考えさせるメッセージ、そしてドラえもん映画史上に残る任期キャラクター・水中バギーの存在…どれを取っても素晴らしい作品です。
だからこそ、本作の主題歌は良い意味で存在感が薄い。それこそ遠い海から聞こえる波音のように全く自己主張せず、全てが終わったエンドロールで流れるのです。子供の頃は、静止画でしかもインパクトの弱い主題歌に退屈なエンディングだなあと不満もありましたが、今思えば、本編でもう十分胸がいっぱいになるからこそのこの演出なんだと納得。優しい歌と海の静止画の中、感動の余韻にひたるのです。
瀬戸内育ちの僕にとっても、海は心を預けられる大切な存在。「ザブリン・ザバリン・シューシー・オーシャン」という言葉遊びが見事過ぎる一曲です。
●風のマジカル
第5作『のび太の魔界大冒険』より。本作も魔法世界と言う魅力的な舞台で、息つく間もないスリルとサスペンス、後半での伏線改修と逆転劇、勇気と友情のドラマと、子供心にはちょっと怖くて難しい印象もありましたが、紛れもない傑作です。
実は主題歌は劇場公開時しか使用されておらず、大人の事情でその後のビデオやDVDでは第3作の『だからみんなで』に差し替えられています。よってこの『DORA THE BEST』にもインストゥルメンタルバージョンのみ収録されています。ただ美夜子さんが月の光で元の姿に戻るシーンなど、作中BGMとしてこの曲のメロディを聴くことはできます。美しくて可愛い旋律が、魔法のイメージとよく合っていますね。映画もこの頃になるとBGMがかなり充実しており、過去作品からの使用曲も散見されます。特にメンバー全員集合した場面で、第2作の『心をゆらして』のメロディが流れるのは嬉しい演出です。
医学部5年の時、僕があまりに熱弁するのでそれならという話になり、実習先の宿舎で班のみんなでビデオを見たのは良い思い出です。帰りの車でもひたすら解説を続けていたら、「映画よりお前の話の方が長い」と言われてしまいましたが。
●少年期
第6作『のび太の宇宙小戦争』より。スター・ウォーズの世界観に、小さくなってプラモの戦車に乗るという少年の夢を織り交ぜた藤子F先生のセンスには脱帽。作画の美しさも含めて、安定のクオリティを持つ作品です。
主題歌はファンが最高傑作と呼ぶ一曲。僕がCDに収録されていて一番嬉しかった曲でもあります。この曲のすごさは、その切ないメロディと歌詞。だって映画の内容は宇宙戦争ですよ?普通なら派手な曲や勇ましい曲をあてがいそうなもんじゃないですか。それなのにギター一本で歌ってもいいような素朴なマイナーチューン。おそらくこの曲で映画の印象は180度変わりました。様々にアレンジされてメロディは映画全編通して流れているので、日常のシーンも出撃のシーンもとにかく切なく物悲しい。そして「僕はどうして大人になるんだろう」という歌詞は、作中で独裁者と戦うというすごいことをやっているのび太たちですが、やっぱり彼らは少年なんだとふと思い出させてくれる効果も与えています。
ちなみに本作では、ドラえもん・のび太・ジャイアンがチーム、しずか・スネ夫がチームという珍しい別行動が見られます。特にスネ夫にスポットが当たっている点はシリーズでも希少。ゲームが好きで、プラモが好きで、ちょっぴり臆病な彼だからこそ、等身大の少年として本作を象徴するのでしょう。
●わたしが不思議
第7作『のび太と鉄人兵団』より。地球侵略を狙うロボット軍団とのび太たちの闘いを描いており、部隊が普段の東京ということもあって、冒険よりも戦争色の濃い異質な作品。子供心にも恐怖が強かったですが、人間とは何か、豊かな文明とはどうあるべきかという根源的なテーマを描いた名作です。
主題歌については、藤子F先生と武田氏がどれだけ打ち合わせをされたのかはわかりませんが、作品の核とシンクロした内容になっていると思います。本作は解釈の分かれる映画でもあり、友情や思いやりの大切さを描いた物語として見ても十分感動的なのですが、そうではなく、そういった感情も含めて矛盾や葛藤こそが人間の証明なんだと描いた物語だと僕は感じました。のび太やしずかと触れ合ううちにヒロイン・リルルに生じる変化、迷いのないロボット軍団と迷いだらけの人間との対決はとても興味深いです。だからこそ、「どうしてなんだろう 泣きたくないのに」と心の不思議を描いたこの主題歌が相応しい、まさにリルルのテーマといった趣なのです。広がりのあるストリングスのイントロは、心の花が開いたような名アレンジ。作中でもリルルの魅力が爆発するクライマックスシーンで使用されています。
ちなみに本作はリメイク映画も製作されていますが、こちらでは前者の解釈が採用されており、主題歌もそれに合わせた内容になっているのがまた興味深いです。
●友達だから
第8作『のび太と竜の騎士』より。恐竜絶滅の真相、地上人と地底人というどちらも悪ではない二つの種族の闘争、タイムマシンも絡んだかなり複雑なストーリーは、正直子供心には難し過ぎました。大人になって再見すると、一つの巧みなSF映画として、その物語の見事さに気付かされる作品です。
主題歌は、そんな内容とは全く関係のない、ドラえもんが歌う明るい友情の歌。もしかしたらここでバランスがとられているのかもしれませんね。難しい物語だけど、このわかりやすい歌のおかげで、子供たちも楽しく映画を観られるのです。「僕たち本当は友達みたい」という歌詞がなんとも可愛く、ドラえもんとのび太の関係を、ひいては見ている子供たちとの関係を、的確に表現していると思います。
●君がいるから
第9作『のび太のパラレル西遊記』より。本作は藤子F先生がご病気のため、初めて原作漫画なしで作成された映画ですが、とても完成度が高いです。ちなみに福場が初めて映画館で観たドラえもん映画でもあります。内容は前作と異なり、悪い妖怪をやっつけて世界を救うという、わかりやすくて痛快な冒険活劇。前半はサスペンス、後半はアクションの連続で、のび太がとにかくかっこいい作品です。
主題歌もかっこよさが意識された初めてのロックサウンドで、流れる度に興奮が高まります。特に燃え盛る城に飛び込むシーンでの効果は絶大。当時、映画館を出たところでたくさんの少年がこの曲を口ずさみながら孫悟空の真似をしていました。もちろん僕もその一人。親と映画に行った後、親戚にせがんでもう一度見に行ったのを思い出します。
ちなみに当時は「GO TO THE WEST」という英語の歌詞が聴き取れず、「僕はね」だとずっと勘違いして歌っていました。「Lupin The Third」が「ルパンだぞー」に聴こえるのと同じですが、子供はそれでよい。そんな謎がいつか解けるのも大人になる楽しみなのです。
●時の旅人
第10作『のび太の日本誕生』より。記念すべき10作目の舞台は七万年前、日本人のルーツを探るというこれまた心に残る作品です。
主題歌も本作のテーマにぴったり。武田氏の作詞の才能を感じさせられた一曲です。ラブソングでも応援歌でもなく、何億年も前から人間はこの地に生きていて、そこには必ず誰かがいた…という感慨を優しく歌った内容。特に好きなフレーズは「私の心よもっと広がれ」。作中では、初めて日本にたどり付いた人々が村を作るシーンで使用されています。今はもういない誰かの心に自分の心を重ねることができたら、タイムマシンがない僕たちでも、きっと時を旅することができるのでしょう。
歌詞だけでなく曲とアレンジも素晴らしく、特に高温域を多用したピアノが美しい。こんな名曲が映画のためだけに作られているというスタッフの心意気が最高!CDでフルコーラス聴けた時は鳥肌が立ちました。
●天までとどけ
第11作『のび太とアニマル惑星』より。動物だらけの星が舞台で、のび太たちも動物の帽子をかぶっているため、絵本のような雰囲気が可愛い作品。それでも神話に隠された謎の解明、火器を使わない戦争、自然保護へのメッセージなど、内容は濃いです。
主題歌は人間について歌ったもの。つまり本作に出てくるのはたくさんの動物たちだけど、描かれているのはやっぱり人間の姿なのです。戦争をするのも人間、自然を破壊するのも人間、動物を傷つけるのも人間。でもこの曲は歌ってくれます…「夜空の星の一つ一つに綺麗な名前を付けたのは人間だから」と。「この世で生まれた生き物たちで花を見つけて微笑んだのは人間だから」と。ロボットや動物を通して、人間とは何かを考えさせてくれるのも、藤子F先生の作品の味わいですね。
ちなみに本作はギャグシーンも満載で、特にジャイアンが秘密道具でゴリラ並みの怪力を発揮した場面で、「素質は十分にあったのだ」というスネ夫の呟きが最高でした。
●夢のゆくえ
第12作『のび太のドラビアンナイト』より。今回の舞台はアラビアンナイト、難しいテーマのない、色彩鮮やかな世界での冒険活劇。ほとんどの場面が屋外ということもあり、心地良い開放感をまとった作品です。
一体アラビアンナイトにどういう主題歌をもってくるのかと思いきや、またまた武田氏の作詞が素晴らしい。砂漠・三日月・魔法などの単語をこんなふうに使用するなんて。特に「レモン色した三日月浮かび」というフレーズが大好きです。音楽的にも、大人の落ち着きを持ったボーカルと、ストリングスとホーンの優しいアレンジがとてもロマンティックな一曲。部屋で流しているだけで、真っ青な空と地平に広がる白い砂漠が浮かびます。
ちなみに歌っているのはトワエモアのあの方です。
●雲がゆくのは
第13作『のび太と雲の王国』より。未知の世界での冒険、そこにいた種族との闘争、ドラえもんとのび太が二人で行動、自然保護のメッセージ、そして過去のテレビシリーズで登場したキャラクターたちの再登場など、原点回帰も含めたドラえもん映画の集大成と呼べる傑作です。
主題歌は第6作の『少年期』に続く、せつないマイナーチューン。歌詞の内容は自己犠牲と誰かの幸せ。「この街に雨降る時 どこかの街は日射しの中」、「誰かのためになるなら冷たい雨に濡れてもいい」などのフレーズは、地上人と天上人の拮抗する二つの文明、終盤でのドラえもんの前代未聞の行動に通じているように感じます。作中では、故障したドラえもんを抱えたのび太が大きな鳥の背中に乗って天上人の国を脱出し、自分たちの雲の王国に戻ってくるシーンに使用。残りの仲間は捕えられ、ドラえもんは壊れ、問題は何も解決していない状況。そこに映し出されるのは夜の静寂の中に佇むみんなで造った王国、みんなで遊んだ王国の風景。劇場で観たこのシーンの映像は今も心に焼き付いています。なんでしょうね、あの不安だらけの中で懐かしくてほっとしたような感覚。せつなくも美しい旋律の中、のび太の気持ちが流れ込んできたようでした。
ちなみに、本作は僕と妹が揃って好きだった映画でもあり、子供の頃は何度も一緒にビデオを見ました。妹の結婚の時に歌でプレゼントした曲の一つもこの主題歌。マニアックな兄妹ですねえ。
●何かいい事きっとある
第14作『のび太とブリキの迷宮』より。本作最大の特徴は冒頭でドラえもんが敵に捕らわれてしまい、クライマックスまで活躍しない点。そのためのび太たちは秘密道具なしの四人だけで異星に乗り込み、ドラえもん救出に奮闘します。途中でのび太がドラえもんへの思いを口にするシーンが印象的。便利な道具に頼り過ぎると人間はダメになるという、まるで現代社会を予言したような藤子F先生のテーマも見事です。
主題歌は少女の女らしさへの憧れを歌ったもので、映画の内容とは関係ないですが、アレンジが素敵。イントロのワクワクする感じが特に良く、ブリキのおもちゃがたくさん登場する本作にぴったり。作中でも起死回生の大逆転のシーンに使用されています。
●夢の人 世界はグー・チョキ・パー
第15作『のび太と夢幻三剣士』より。今度の舞台は夢の中、竜を倒す勇者と三銃士の世界観が融合したファンタジー色の強い作品です。
主題歌は15周年のためか二曲も作られています。作中で流れる『夢の人』は歌詞も曲もかっこよく、冒険アクションがメインの本作にぴったり。特に鐘を打ち鳴らすアレンジが好きです。映画の内容に初期作品ほどの深みや新鮮さが感じられなくなってきた時期でもあり、そこを主題歌の力がうまく補ってくれているようにも思います。
エンディングで流れる『世界はグー・チョキ・パー』は、みんな得意と苦手があるけどだから楽しいんだ、みんな違うからあいこなんだという、近年騒がれている発達障害の問題にも通じる、ひいては世界平和の願いにもなっている内容。とてもドラえもんらしい一曲です。
●さよならにさよなら
第16作『のび太の創世日記』より。非常に好みの分かれる映画だと思います。のび太が造った別の地球での古代から近代までの歴史を追っていくのですが、教育アニメのような印象もあり、特に子供には退屈かもしれません。のび太たちはずっと傍観者で活躍が少ないのも難点。ある一つの家系図を先祖から子孫まで追っていくという藤子F先生の想像力は素晴らしいのですが、ドラえもん映画としてはやはり異色な作品です。
主題歌は時間の流れ、出会いと別れの繋がりを描いた武田氏らしいフレーズ満載の一曲。特に時間の螺旋をリンゴの皮むきに比ゆする部分は天才的。優しいエレキギターのイントロとアウトロが、人間が子孫を遺して命を繋いでいく、出会いが別れに、別れがまた出会いに通じる普遍性を表しているように感じられます。
●私の中の銀河
第17作『のび太と銀河超特急』より。前作が異色作だったのに対し、本作は宇宙を走る蒸気機関車に乗って旅するという、子供の夢をたくさん叶えてくれる冒険活劇です。藤子F先生は次回作の執筆途中で亡くなられたため、ご存命中の映画としては惜しくもこれが遺作です。それに合わせてか、武田氏の作詞提供もこれで打ち止めとなりました。
主題歌は武田氏らしい優しい作詞の一曲。銀河→渦を巻いている→浜辺の貝殻、と結び付けてしまうその発想力がとてもうらやましいです。
どうしても宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のイメージがあるのかもしれませんが、エンドロールで宇宙へと去っていく列車を見ると、まるで藤子F先生がそこに乗っておられるかのような寂寥感を覚えました。
福場への影響
今回のコラム、実際にそのCDを流しながら書いたのですが、いったい何回ヘビーローテーションしたでしょう。気付けば長文になってしまいました。それくらいドラえもん映画とその主題歌は、僕にとって大切なものなんだと改めて実感しました。思えば歌が好きになったきっかけも、ドラえもん映画の主題歌だったのかもしれません。
中学・高校時代は毎年仲間と映画に通いました。その頃はメガネをかけていたこともあり、一部の友人からは「野比くん」というあだ名で呼ばれていました。今年の正月の同窓会で久しぶりにそう呼ばれて思い出しました。
今でも趣味でギターの弾き語りをする時は、『少年期』や『時の旅人』がレパートリーです。最近は『夢のゆくえ』のピアノを練習中です。DVDを流せば、頭の中の記憶映像で当時と同じようにドラえもん映画を楽しむこともできます。
まいった、こんなに大好きだったとは。
最後に
『のび太の銀河超特急』はドラえもん映画再復興の兆しを感じた作品でもあり、次回が楽しみだと仲間と盛り上がっていました。そんなタイミングでの藤子F先生ご逝去だったので、本当に悲しかったです。ですが先生が蒔かれた数々の夢の種は、しっかり僕たちの心に根付いています。大人になってもそれを忘れずに生きていきたいと思います。
というわけでざっと振り返ってみたドラえもん映画主題歌たち。『DORA THE BEST』には、他にもテレビシリーズでおなじみの曲もたくさん収録されていますので、特に大山のぶ代さん時代のドラえもんに親しまれた方々にはお勧めです。
残念ながら新型コロナウイルスの影響で今年の映画の公開は延期されるようですが、テーマはまたまた藤子F先生の大好きな恐竜。もはやスタッフがドラえもん映画で育った世代。焦らず待っておりますので、これからも夢の種を子供たちに蒔き続けてください!
令和2年4月1日 福場将太