ドクター三宅と再び神戸アイセンターへ

令和2年2月16日(日)、一年ぶりに神戸アイセンターのビジョンパークを訪れた。NEXT VISIONのイベント『I see! Working Awards 2020』の授賞式に参加するためだ。昨年は完全な観覧者としてであったが、今年は審査員の一人として携わらせていただいた。
正直なところ、肺炎の問題が日増しに深刻化する時勢、浮かれてばかりもいられなかった。授賞式は開催に踏み切られたものの、交流会は中止、過剰な参加呼びかけもしないという自粛体制であった。それでも応募してくださった方々、足を運んでくださった方々、そして会場に来れずとも応援してくださった方々には、心から感謝を伝えたい。

1.あれから一年

昨年、ビジョンパークに来たことで人生のパレットに新たな色が加わった。自らが視覚障害を持ちながら、その医療や福祉について自分があまりに無知だったこと、こんなにも新しい動きが始まっていることを思い知らされた。そして、そこで出会った人たちがたくさんのチャンスや気付きを僕に与えてくれた。
もし一年前の来訪がなかったら、もちろんNEXT VISIONの理事になることもなかっただろうし、今のように心の医療者として視覚障害に携わりたいと強く思うこともなかったに違いない。そして神戸に仲間ができることも、ビジョンパークに懐かしさを感じることもなかっただろう。

一年ぶりに会う柔道家の初瀬さんは、変わらず豪快であたたかい人だった。『ゆいまーるのこころだより』の連載でお世話になっている点字毎日の方や、昨年講演の機会を作ってくださった地元の支援者の方にもお会いできた。直接会えるのは時々だけど、たくさんの人に繋がって自分は生きていることを改めて感じた。

2.授賞式

今年も事例部門・アイデア部門、たくさんの受賞者がいらっしゃった。特に今回は審査員として一人一人の内容を事前に詳しく読んで居たので、実際にご本人と触れ合ってお話を聞くのはとても楽しかった。
惜しくも入選を逃した方々も含めて、色々な発想や勇気で頑張っている人たちが日本中にいる。それを知れるだけでパワーがもらえる。教えられたこと、目が覚まされたこと、心の医療にも応用できることもたくさんあった。

それぞれが持っている経験、そこから生まれるアイデアは紛れもなく財産だ。失敗談や廃案も含めてそれを分かち合うことは、専門書を読破することの何十倍も得るものがある。
三人寄れば文殊の知恵。それぞれがそれぞれの人生の専門家。経験に勝る資格なし。当事者も支援者も関係者も、あるいはたまたま通りかかった人も含めて、みんなが気軽に言葉を交わせる公園…ビジョンパークがそんな場所であったらよいなと思う。
そして『I see! Working Awards』も今年で四回目。僕が知っているのは3回目からだが、年々内容に深みが増しているのを感じる。もっともっとこのイベントが世の中に認知され、さらにたくさんの応募が殺到するイベントにしていきたい。
まずはこの度受賞されたみなさん、本当におめでとうございます!中には毎年これを目標にしてくださっているレギュラー応募者の方もいらっしゃるようなので、来年も期待しておりますぜ。

3.NEXT VISION

今回初めてNEXT VISIONの理事会に参加した。正直そんなたいそれた場に名を連ねるのは気後れしてしまうが、三宅先生・高橋先生をはじめとするみなさんは、こんな僕の発言でもあたたかく聞いてくださった。
病気が治ることだけが回復ではない、もっと重要なのは希望や生きがいを感じられる心の豊かさ。精神科医さえふとすれば忘れがちなこのことを、NEXT VISIONは当たり前のこととして目指している。今回それが実感できてとても嬉しかった。

もちろん神戸だけではない。北海道だけではない。視力を失って心の視野も狭めている人たちはたくさんいる。必要な情報が届いていない地域はたくさんある。眼科と精神科の狭間で行き場を見失った人たちもいるかもしれない。そして曖昧で中途半端な自分を許せずにいる人たちもいるかもしれない。
大丈夫、中途半端さなら僕も負けない。いつか神戸と北海道を繋ぐ、眼科と精神科を繋ぐ懸け橋に…というのはさすがに大口を叩き過ぎなので、橋じゃなくても細い細い綱渡りのロープくらいにはなれるよう頑張っていきたい。

4.友達だから

僕がビジョンパークに行くきっかけを作ってくれたのも、NEXT VISIONに誘ってくれたのも、全ては三宅くんのおかげ。彼が大学の同級生だったことは、僕の人生の大きな幸運だ。
授賞式の前夜に二人で話したが、彼が語る夢は毎回進化しているのがすごい。そして医学部教育のあり方についても話題になったが、僕と同じような違和感を学生の頃から彼も抱いていたことには驚いた。ちょうど前回のコラムで書いたようなことを、彼も普通に語っていた。
いつもクラスの中心にいたメジャーな男、一方はクラスの片隅のマイナーな男。二人が友達になったのは、実は共通の感性もあったからなのかもしれないと今回発見した。まさか未だに二人とも独身なのもその感性のせいか?

まあそれはさておき、NEXT VISIONの理事として貢献するにはまだ時間がかかりそうだが、友達として支えられることはきっとある。
三宅くん、お互いいつまでも夢を語れる大人でいよう。

5.研究結果

僕らしい形で、いつかNEXT VISIONの役に立とう。

令和2年2月18日  福場将太