総括 2019年

平成と令和、二つの時代を接続した2019年がもうすぐ終わる。世相としては今年も明るい話題より暗く悲しい話題が多い年であったが、僕個人としては近年で一番充実感を覚える年となった。できればこんな年を増やしていきたいが、今年最後はそんな2019年を研究しよう。

1.今年のコンセプト

それはズバリ『ためらうな』、これを強く意識して一年を駆け抜けた。
ためらわないことがどうして重要かというと、僕はあまりに腰が重く即決ができない性格だからだ。その分、一度決断したらいつまでもやめられない。慎重で義理堅いといえば長所にも思えるが、臆病で頑固といえば完全に短所であり、就職活動の際の履歴書にもこれは必ず書いていた。
特に視力が低下してからはこの性格が強化され、仕事以外のことに関しては本当にためらいがちになってしまった。迷惑をかけるかもしれない、がっかりされるかもしれない、そんな気持ちがどうしても先に立って、同窓会や旅行には全く参加しなくなってしまった。

そんな自分にとって、今年のコンセプトは行動原理が全く変わってしまうものである。しかし2018年秋のあの講演をきっかけに、長年固定されていた心のギアがついにチェンジした。
当然メリットもデメリットも生じたわけなので、さっそく振り返ってみる。

2.メリット

まずは、サイトを立ち上げたことによるライフワークの復興。
元旦より公開したこの『MICRO WORLD PRESENTS』は自分の思いを綴る場所。文章を書けばそこには責任が生じる。特に病気や障害に関する話は、万人に賛同を得ることは有り得ない。医療に携わる人間がエンターテイメントを追究することも、不謹慎と捉えられかねない。
だから批判はあって当然。それを心配してしまうと何も書けなくなるが、『ためらうな』のコンセプトで一年間サイトの原稿を作り続けた。おかげで、昔のようにまた創作活動に没頭でき、たくさんの元気を心に与えることができた。愚かでも自己満足でも、やっぱり自分には必要なことなのだと実感した。

続いて、神戸アイセンターに出向いたことによる当事者活動の拡大。
2月に友人の三宅くんに誘われて初めてネクストビジョンのイベントに参加し、たくさんの新たな出会いを得られた。夏にはネクストビジョンの理事に誘って頂いた。錚々たるメンバーの中に加わる…かつての自分なら二の足を踏んでいただろうが、『ためらうな』のコンセプトで即決した。おかげで、医療者かつ当事者という自分の生き方がまた少し見えたような気がした。
それ以外にも、出会った人たちから頂いた執筆や講演・取材の依頼も今年は全てお受けした。おかげで、たくさんの学びを得ることができた。
出会いの数は未来の可能性の数。そこからどんな物語が始まるのか、とても楽しみである。

最後に、外に出掛けることによるプライベートの充実。
休日は家にこもっているのが当たり前だったが、今年は友人が誘ってくれた時には『ためらうな』のコンセプトで出掛けるようにした。まだ心苦しさがなくなったわけではないが、それでも友人も楽しんでくれていると信じられるようにはなってきた。
おかげで、キノコ汁を飲んだり、カラオケに行ったり、ライブを見たりと、一人では実現不可能だった思い出がたくさんできた。誘ってくれる人たちの存在は本当に有難い。いつか自分から誘う勇気も持てたらいいなと思っている。

3.デメリット

それは、なんといっても多忙である。
ためらわず色々なことをすれば、当然スケジュールが立て込んでくる。もちろん好きでやっているので全く苦ではないし、心の鬼門である退屈を回避できた。それぞれの活動は相互に作用しているので、仕事だけしている生活より良い仕事ができたとも思う。

とはいえ充実と多忙は錯覚しやすく、暇はともかく余裕は必要。余白のないスケジュール帳は体調を崩すと一気に破綻する。イレギュラーな用事が発生してもこれでは対応できない。
一度やると決めたことはやり続けてしまう性分のため、どんどんやることが上乗せされていくのが自分の反省点。今年はやるかやらないか迷った時には、ためらわずやる方を選んできた。今後は何かをやめることもしていかなくては。

また自分に意識が向き過ぎて周囲への意識、つまりは優しさが少なかったことも今年の反省点。特に忙しい時はそうだった。
しかし好きで忙しくしていたのだから、それで人を傷つけていい理由にはならない。自分が頑張っていると思い込むと、無意識に人が自分より頑張っていないと思ってしまう。そうなると配慮のない言葉、冷淡な言葉、批判的な言葉がつい口を突いて出てしまう。今年はそんな嫌な自分を何度も感じた年でもあった。
確かに自分の人生の主人公は自分だが、それは誰でもそうであり、この世の中はそんな主人公たちが共演している舞台なのだ。
けして自分が中心ではない。当たり前のことだが、頑張って調子に乗った分、その当たり前を忘れていた時間が多かったように思う。

4.来年のコンセプト

そんなわけで、2020年のコンセプトは『優しくなれ』にしたい。もっと人に優しく、人を許せる心になりたい。
もちろんあまりこれが行き過ぎると、ストレスを溜め込むことになるし、お互いを甘やかすことにもなりうる。そうなると2021年のコンセプトが『厳しくなれ』になってしまいそうだが、ひとまず来年は優しさを大切にしたい。

5.研究結果

アウフヘーベンという言葉がある。相反する二つのものを、どちらも妥協させず融合してより良い形を生み出すことだ。来年は『人に優しくなる』と『無理なことは断わる』をどうアウフヘーベンするかが僕の課題である。

2019年の自己採点: 77点

令和元年12月8日  福場将太