この度『点字ジャーナル』という雑誌にエッセイを寄稿させて頂いた。今や文章をしたためることはライフワークの一つでありこの上ない喜びなので、それを活かせるお話を頂けたのは本当に嬉しい。まあ内容についてはネタバレになるのでここでは触れないが、今回はどうしてそんな機会に恵まれたのかということを研究してみたい。それはまさに点と線であった。
1.勇気栽培
エッセイを書かせて頂いた直接のきっかけは、今年2月に出会った初瀬さんからのご紹介である。では初瀬さんと出会ったきっかけはというと、友人の三宅くんに誘われて神戸アイセンターに行ったこと。
では行こうと思ったきっかけはというと、昨年11月に学生時代の先輩に誘われて眼科の講演会に出演したこと。ではこの先輩と再会したきっかけはというと、昨年1月に視覚障害を持つ医療従事者の会『ゆいまーる』の勉強会で講師をしたこと。
では講師をしたきっかけはというと、とあるドクターからご依頼を受けたこと。ではこのドクターと知り合ったきっかけはというと、自分と同じように視覚障害を持つ精神科医がいると職場の同僚から教えてもらったことだ。
さかのぼり過ぎかもしれないが、源流を求めればこういうことになる。一つ一つの出来事はただの「点」であるが、それが次に繋がって「線」になっているのは興味深い。そしてこの「線」の正体が小さな勇気だったと思う。
点は次に繋がなければそこで終わってしまう。お誘いや依頼を受けても応じなければずっと点は点のまま。だから必要なのが「やってみようかな」、そして「やれるかもしれない」という勇気だ。
今、僕の心の中でそんな勇気が少しずつ育ってきているように思う。
2.ひとり上手
自分はあまり人と繋がりを持つことに積極的な人間ではない。誰かと過ごす時間と一人で過ごす時間を比べたら、圧倒的に優先しているのは後者だ。普段人と話す仕事をしている反動もあるかもしれないが、連休ともなればずっと家にこもり思う存分思索や創作にふけるのが楽しくて仕方ないのである。特に目を悪くしてからはますますその傾向が強まり、ごく親しい間柄の友人の場合を除いては集まりにも足を運ばなくなってしまった。
確かに一人の時間は好きだ。一人で十日間過ごせと言われても満喫できる自信もある。でもやっぱり一人きりでは味わえない幸せもたくさんある。自分だけでは起こせない変化、生まれない着想はたくさんある。それを近年思い知っているところだ。
勇気を出してやってみたから点が線になって次の点に繋がった。新しい出会いはまた次の出会いを呼んでくれた。それをくり返したからこそ、このサイトも立ち上げられたわけだし、今回のエッセイだって書かせてもらえたのだ。
もちろん欲張ってはいけないし調子に乗り過ぎてもいけないけれど、しばらく出会うことをさぼっていたのでまた勇気を出してみたい。そうすればもう無理だとあきらめていたことだって、もしかしたらきっかけが巡ってくるかもしれないから。
3.研究結果
人と人の間で生きるから人間。
夜空の星を繋いで素敵な星座になるように、人と人も繋がってこそ描ける大きな夢がある。流れ星もいいけれど、星座の美しさも大切にしたい。
令和元年5月4日 福場将太