上手な部活の選び方

先日見知らぬアドレスからメールが届いた。また迷惑メールかと思いきや、それは大学時代に所属していた音楽部の現役勧誘隊長からだった。内容は今年度の新入生勧誘スケジュール、何日にライブをやるとかどこどこのお店で食事会をやるとかそんな話だ。

素直に懐かしい。思わず自分が勧誘をされた時のこと、そして勧誘をした時のことを思い出す。うちの大学は学生数が少ないにも関わらず部活は数十個もあった。どの部も伝統とOBの期待を背負っているので自分たちの代で終わらせるわけにいかず、当然新入生獲得の争いは熾烈を極める。そのため行き過ぎた勧誘活動を防ぐべく勧誘法なる謎の規則が設けられ、各部活は決められた日時・場所・順番と方法に従って新入生にアプローチせねばならなかった。

そして各部活で勧誘活動の中心になるのが勧誘隊長。正直こんなに胃が痛くなる任務はないと思う。まるで営業成績を競わされる営業マンさながらで、部の命運がかかっているわけだからそのプレッシャーは並大抵ではない。路上ビラ配りのバイトで一枚も渡せなかった僕のような奴には絶対務まらない仕事だ。

今回メールをくれた後輩よ、とにかく健闘を祈る。大変な任務だが勧誘が成功した時の嬉しさは人一倍、その先には自分が入部させた1年生たちとの楽しい青春が待っているのだから。そして面識のないOBにまで丁寧に連絡くれてありがとう。

そんなわけで今回は部活選びの研究です。

1.それが決め手さ

改めて考えてみる。新入生は一体何を決め手に部活を選ぶのだろう。活動内容はもちろん、部員の雰囲気、魅力的な異性の先輩の存在、勢いやフィーリングなんてこともあるかもしれない。
自分の経験から言うと、中学時代に入部したのはマイクロワールド研究会…名称からはさっぱり活動内容がわからない。部活紹介のステージで2年生の先輩数人がボソボソ部の説明をしていたが、正直楽しそうな雰囲気にも見えなかった。そして女子の先輩は皆無。なのに何故か見学に行き、入部して高校卒業までの六年間を捧げてしまった。あれは完全にフィーリングだったと思う。

大学時代、音楽は絶対やるつもりだったので音楽部を選んだのは自然な流れであったが柔道部にも入部したのは完全に想定外だった。実は前述した勧誘法に抵触しない例外の勧誘活動があり、それが学生寮限定で行なわれる寮勧誘。僕は上京したその日にあれよあれよという間に寮勧誘で柔道部の先輩に連れ出され、食事会の中でもう頷くしかない雰囲気となり入部してしまった。入学式より先に入部してしまったわけである。あれは完全に勢いだった。

そういえばこんな後輩もいた。その年は勧誘が難航しておりどうしても彼を入部させたいというこちらの熱意が暴走し、最後には深夜のスナックで彼を説得し続ける状態になってしまった。それはまるで刑事に自白を共用される容疑者のようであり、やり過ぎだと僕は店の裏で先輩に怒ったりしていた。結局何時間説得されてもその後輩は陥落せず場は解散、楽しい食事会のはずがこんなことになってしまい彼は二度と僕らに関わらないだろうと思っていた。

ところがどっこい、後日彼は自ら入部を求めて会いに来てくれた。そしてやがては柔道部を大会好成績へと導く名主将になるのである。一体何が彼の決め手だったのだろう。

2.二つの責任

振り返っても結局部活を選ぶ決め手はわからない。活動内容が好きで入っても途中で辞めてしまう人もいるし、嫌々入ったはずが大満足で引退まで全うする人もいる。だからきっと重要なのは選び方ではないのだ。何を決め手にしたとしても選んだ時点では正解も間違いもなく、その後楽しい青春が送れたら結果オーライで大正解なのだ。
僕が勧誘をするのが苦手だったのは、「入部させてもし楽しくなかったら申しわけない」という意識が強かったからだ。そんな僕に先輩は言った、「今は入部させることだけ考えろ。そして入ってくれたら責任を持って幸せにしてやるんだ」と。そういう考えもあるんだなあと思った。そして僕は確かに幸せにしてもらった。

入部させた者の責任、それと同時にもちろん入部した者の責任もある。新入生は、自分で決断した責任を持って幸せに慣れるよう励まなくてはならないのだ。
忘れてはいけない、部活とは部員であるということ。伝統もOBも重要だが減益の部員がいなければ部活は存在しない。一人ひとりが部活の一部であり、誰かがいるのといないのとではそれはもう違う部活なのだ。

だから入部した時点でもう自分が部活の一部。楽しくないのならその責任は自分にもある。そして学生である以上、同じ立場の一年間は二度と巡って来ない。お客様なのは最初だけで、気付けば自分も先輩になり、自分を勧誘してくれた人たちは引退し自分たちが部を動かしている。かと思えば自分たちも引退を向かえ部を後輩に託す…。そう考えると部活動とはまるで人生の縮図だ。

OBとしては、苦しみしかない伝統を無理に繋いでくれとは思わないが、もし楽しさや愛しさもそこに変わらずあるのなら、やっぱり自分が所属した部活が末永く続いてくれることを願ってやまない。

マイクロワールド研究会、音楽部、柔道部。今も多くの面で自分を支えてくれている大切な存在です。

3.研究結果

入れた以上幸せにしろ、入った以上幸せになれ。

平成31年4月13日  福場将太